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なぜパワハラはいかんのか パワハラ職場を考える

パワハラはどんな時に起きるのか


「パワハラ」は個人の性格や人間関係の摩擦で起きる
そう思っている人が多いかもしれません。
でも、パワハラって、単なる人間関係のもつれではありません。

パワハラが起きる職場になっていることは、
組織の文化そのものが不健全になってきているサインでもあり、
気づかないうちに創造性を奪っていく危うい仕組みのひとつなんです。

特に危ういのは、「同調圧力」が強く、「同質性」が高い職場環境です。
言われなくてもこれくらいわかって当然、という「以心伝心」「阿吽の呼吸」がパワハラが許容されてしまう組織の前提条件です。

でもこれって、ある意味で「居心地が良い」職場環境です。

しかし、こうした組織では、パワハラが起きやすいだけでなく、イノベーションが生まれにくい土壌が出来上がってしまう。
「言わなくてもわかる」からは、従来の思考の枠から離れた考えは生まれにくいものです。
異論や思考・発想の多様性が尊重されることが必要になります。

なんで同質性が求められてきたのか


もちろん、同質性は常に悪いものではありません。
たとえば工場のライン作業や、反復的な業務が多い現場では、「以心伝心」「阿吽の呼吸」がむしろ強みになります。
言葉にしなくても通じ合える環境は、生産性を高める側面もあります。
実際、従来の日本型組織が「居心地の良さ」を追求してきたのは、そうした合理性の裏返しでしょう。

みんなで共通の目標に向かって、お互い様の精神で助け合い、達成する。
そして皆で打ち上げでたたえあう。
いわゆるモーレツ社員の世界でしょうか。
古き良き20世紀の日本の会社の世界ともいえるかもしれません。

創造性が必要なのです


さて、問題はそこから先です。
職場に求められるものが「数をこなすこと」だけではなく、「新しい価値を生み出すこと」や「変化を起こすこと」であるなら話は別です。
違う視点や批判的な意見が排除される空気では、多様な発想は芽吹く前に摘まれてしまう。
心理的に安全でない場では誰も挑戦しようとしなくなり、組織は停滞していきます。

創造には、必ず「違和感」や「対立」が伴います。
違う視点がぶつかり合い、そこから化学反応のように新しいアイデアが生まれる。それが本来のイノベーションの姿です。
ところが、パワハラが横行する組織では、「異質な意見を言うこと」自体がリスクになってしまう。
そんな環境で、挑戦なんてできるわけがない。
組織としての「創造性」にとっては、同調圧力はマイナスです。

そして、その「創造性」が重視される場面が増えた、
それがパワハラ職場を改善しなくてはならない一つの理由です。

時代背景とか


物がない時代、これまでなかった物を手に入れることが善であり、幸せであった時代なのだと思います。
でも、時代は進み、衣服や家財などは人々にいきわたりました。
新しいものを手に入れる、ということは、
これまで使っていたものと入れ替える、ということが中心になってきました。
そうすると、生産とは、
同じものを大量に作り続け、いきわたらせることから、
これまでにあるものから進化したものにすること、リプレイスすることになってきました。

モノ作りの中心が、
同じものをミスなく大量に早く生産することから、
今までとは違うもの生み出すこと、に変化してきた。
そんなことが起きて、
創造性、アレンジメントが重視されるようになります。
それが今、日本のモノづくりで起きていることなのだと思います。

ちょっと風呂敷を広げすぎました。
閑話休題。

同調圧力は安全性の敵


しかも、この同質性は「創造」だけでなく、「安全」の面でも大きな壁になることがあります。
危険予知や安全対策は、日常業務の延長線上にあるものではなく、想定外を想像する力が必要です。起こるはずのないことを考え、最悪を予測するためには、多様な視点や意見が欠かせません。同調圧力が強い組織では、その力が十分に働かないのです。

だからこそ、安全を守るためにも、多様性を尊重し、異論を口にできる雰囲気をつくることが不可欠になります。

新しいものを作らない職場であっても、パワハラ職場の同調圧力は改善されるべき存在です。

パワハラ職場の雰囲気


精神科産業医としての経験上、パワハラが繰り返される組織には共通点があります。たとえば、

  • 意見を言えば「生意気だ」と叩かれる
  • 上司に異を唱えると「空気を読め」と諭される
  • 周囲と違う行動をとると孤立する

こうした環境では、人はやがて黙り込みます。
考えることをやめ、「無難にやり過ごす」ことだけを学ぶようになる。
これが組織の思考停止、ひいては衰退の始まりです。

そして、安全対策の点でも、マニュアル通りを尊重するあまり、
個々人の意識が危険予知に向きにくい職場となるでしょう。

パワハラのない職場は


「パワハラのない職場=優しい職場=居心地の良い職場」と思われがちですが、以上から、それは誤解かもしれません。

パワハラのない職場とは、
多様な異なる価値観が前提となる、時には意見の対立が起きる職場です。
しかし、
対話を通じて建設的な合意形成ができる、そんな組織です。
つまり、
個々人に異論を受け入れるしなやかさと、
自分の意見を持つ強さが必要になります。
個人の能力と努力が求められる、けしてぬるくはない職場です。

気の置けない関係、ではなく、お互いに尊重し、配慮しあう、
「家にいるほど無防備、無配慮ではいられず、
居心地は良すぎないけれど、でも悪くはない」
そんな”生暖かい”環境が、
パワハラ抑止や危険予知、創造性などの点で、
望まれる職場であるのでしょう。


参考:
「多様性があるチームほど聡明な3つの理由」
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/4668

多様性があるチームほど聡明な3つの理由 | チームマネジメント|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー諸研究によれば、チームの人材多様性を高めると3つの集団的知性が向上するという。それは、(1)事実を認識する能力、(2)情報dhbr.diamond.jp

言いたいことが言える職場は、嫌なことも言われるかもしれない職場であり、油断ならないけど、それが健全、
ということになりますかね。

この項ここまで