おおた産業メンタルラボ

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注意が必要な言葉 「カウンセリング」 その1

「『カウンセリング』をしてほしい」、「『カウンセリング』で話を聞いてもらいたい」と希望される相談者さんにしばしば出会います。
でもその「カウンセリング」って何をしているのか、どのように良くなるのか、ということについては、精神科治療で実際にはどんなことがなされるのか以上に知られていないように思います。
みんなその名は知っているけれど姿を見たことのない、幸せの青い鳥のような、そんな「カウンセリング」について今回は考えてみます。
 
|そもそも「カウンセリング」ってどんな意味?|
カウンセリングとはなんでしょう?
英語でCounseling、日本語に翻訳すると「相談」、「助言」といったところでしょうか
 
カウンセリングという言葉を日常で一番目にするのはカウンセリング化粧品でしょうか。
自分に合った化粧品や化粧方法を選ぶのためのカウンセリングですね。
カウンセリングする人は、この場合は売り子さんでしょうか。
このように、「カウンセリング」はメンタルヘルスに関係することに限定される言葉ではありません。化粧品の販売でも、結婚相談でも、悩み事あるところカウンセリングあり、です。
 


そして「カウンセリング」をするのに資格もいりません。
たとえ近所のおせっかいおばちゃんであっても「カウンセラー」と名乗ることは自由ですし、カウンセリング室などを開くのも自由です。
相談者が来るのか、それに対価を払うのか、そしてそれは役に立つのか、はまた別の話。
 
 
|医師の行う「カウンセリング」|
メンタルヘルスに関する専門家の「カウンセリング」を受けたい場合には、ほとんどの場合、精神科医療機関に行くことになるでしょう。
都市部ではお近くに医療機関ではない、カウンセリングの専門機関がある方もいらっしゃるかもしれませんが、でも私のような日本の一般的な片田舎の住人は医療機関に行くと思います。
そこでは、医師による「カウンセリング」が行われています。
医師の行うカウンセリング、それは「精神療法」と呼ばれます。
 
診療報酬制度の中に「通院精神療法」が設定され、病状の確認から療養の指導まで、「精神療法」の名前の下に精神科医の診察は行われています。
つまりほぼ間違いなく、精神科を受診した患者さんは受けています。
生活指導や言葉による治療めいたものはほとんどなく、診断の説明と薬物療法を行うためのカウンセリング、になっている部分が大きいかとは思います。
「あんなものが?」とがっかりした方もいらっしゃるかもしれませんが、はい、あんなものです。
でも、診断の説明と薬物療法だけでもまあまあ良くなる、ということでしょうかね。
 
 
|気持ちよい?「カウンセリング」|
でもきっと「カウンセリング」と呼ばれるものが受けたい、という方が期待するのは「薬物療法ではない言葉による特別な治療」があるだろう、ということでしょうね。
配置される医療機関も増えた心理士による「心理療法」がその「カウンセリング」なのかもしれません。
「心理療法」では医師の精神療法と違うどんなことが行われているのでしょう?

日本で「カウンセリング」というとほぼ自動的にロジャースの来談者中心療法が想定されている場合が多いです。
来談者中心療法の基本は「積極的傾聴」。
なので、「『カウンセリング』で話を聞いてもらいたい」とおっしゃるわけですね。
自己開示をすること、他ではできないような話を聞いてもらって、共感してもらうことでカタルシスが得られ、感情的なストレスや緊張が解放される。
そのことによって「気分が改善」することを期待するわけです。
 

|ありがちな落とし穴|
はい。「気分の改善」なんです。
言い換えれば「気持ちがよくなる」
そうすると、「精神症状、困りごとを話す→気持ちが良い」のサイクルになってしまうことがあります。
気持ちが良くなるとどうなるか、もともと気持ちが弱っている患者さんですから、それをもっと続けたくなるわけです。
ともすると、カウンセリングを続けることが目標になってしまう、そんなことが起こりがちです。
これぞ「手段の目的化」というものです。
「(精神)症状が改善すること」が治療を受ける目的であったものが、治療を続けることが目的のようになってしまいます。
こうして「カウンセリング依存」「精神医療依存」を作るのは、クリニックの儲けのためにはとても「よろしおすなぁ」。はい。
 
 
|気持ちよくならなくても|
また、気持ちよくならなかったとしても、「カウンセリング」が適切に行われるとは限りません。
不用意な「傾聴」は、精神症状をよりありありと説明するように、そこに焦点を当てて、言語化させようとします。すると、形のない精神症状はより鮮明になし、具体化し、明らかになって、力を持つようになる。
症状が固定化し、遷延したり、回復困難になることすらあります。
「問題について話すことの害」です
 
ちょっと簡単にはまとめられそうにありません。
続く、として今回はこの辺で。