ここまで、その1、その2と「『カウンセリング』ってヤバい」といったことを書いてきました。
「といって、あなたのしてる精神療法はどうなん?批判だけかい?」
という声も聞こえてきそうです。
そこで今回は、「カウンセリング」や「精神療法」が安全で、かつ有効なものになるためにはどうあったら良いと思うのか、について書いてみます。
|私が意識していること|
面接や治療にあたり、私が意識して行っているのは、
・面接のゴール、目標を明確にすること
・面接の卒業、終了を目指すこと
・面接は問題を弄りまわすのを避け、解決について面接すること
です。
これは、同じことを言っているようで、少しずつ異なる定義です。
「ゴール、目標を明確に定めようとすること」は面接の基本的姿勢です。
「面接の卒業」については、目標が達成されればいったん卒業になりますし、達成されなくても他の条件から卒業になることもあります。
「解決について面接すること」は面接のゴールをどのように設定するかについての方針です。
面接が脱線しかけたときに立ち戻るための道しるべになります。
解決が得られないことが明らかな場合、そのテーマについて面接する回数を決めておく、ということもゴールを決めることになります。
|診断するための問診|
苦痛を改善させるのと同時に、医師の面接では、診断を行うことも必要です。
診断をするためには、精神科医は問診により患者さんの苦痛、課題について確認しなくてはなりません。
・保険診療のためにも、
・薬物療法が必要か否かを考えるためにも、
・そして医師に社会的に期待されている前提を満たすためにも、
医師は診断をつけることが必要です。
しかし、症状や問題について扱うことで、その課題を肥大化させないよう、固定化させないように、注意して問診する必要があります。
|問診で心がけること|
適切な言葉を選んで使うことがカウンセリングの基本です。
面接者の方針は言葉の選び方から伝わります。
そのために私が心がけているのは、
「今までのにあった苦痛はどんなことだったのか」と過去の苦痛とこれからは違っているものとして扱うこと。
「その苦痛がありながらもなんとか生き延びてくるためにどのような努力をしてきたか」を教えてもらう、というスタンスです。
もう一つ私が鉄則としていることは、
症状や問題は患者さんにくっついているのであって、患者さんが問題なのではないということ。
患者さんについている課題(時に病気、時に習性、時に行動の癖)が、症状としての行動をとらせるのであって、患者さんと課題は別物。
だから、その課題に対してどう対応するのか、ということを患者さんも治療者も関係者も一緒に考えて実行していく、
ということです。
これは「問題の外在化」という捉え方です。
言語的な表現としては「病気がついている人」であって、
「病気の人」とか「その人が病気」ではないということになります。
|問診から精神療法は始まっている|
診断のための問診の段階から、言葉の選び方によって患者さんの認知を変容させるための働きかけは始まっています。
もっと言えば、診察室に入って、座るための椅子の配置から精神療法は始まっているのです。
この私の姿勢は、
「解決志向アプローチ」「ブリーフセラピー」と、
精神療法の大家の教えと、
現場での精神医療を実践する中で培ってきたものです。
問題を扱わない解決志向アプローチと、診断を必要とする精神医療とのバランスのとり方については、語り始めると終わらないので、今回はこの辺で。
いつか書くこともあるかも。
今回は私の実践している「精神療法の一部である問診」についてでした。
この項ここまで。