おおた産業メンタルラボ

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意識して使わないようにしている言葉「わかりました」

精神科医として、産業医として面接を行う際に、意識して使わないようにしている言葉がいくつかあります。
今回はその中の一つ「わかりました」について書いてみます。
 
「わかりました」という言葉があります。
相槌というか、相手の説明への反応で使う言葉です。
私は精神科医として、この言葉は意識して使うことを避けています。
 
言い直してみれば、
<あなたの云いたいことは伝わりました>
<あなたの主張することを理解しました>
ということになりましょうが、
実際に使われているのは、
<あなたの言いたいことはわかりました。もう時間の無駄なので止めてください>という意志表示としてです。
 

<あなたの言いたいことはわかりました>も正確ではありませんね。
実際のところは<わかったつもりになりました>であればまだよくて、
<わかりたくもありません><これ以上聞きたくありません>という意志表示であることもしばしばです。
 
あえて使うとしたら、「わかったわかった」と繰り返した方が
<もう止めてくれ>という意志は明確かもしれないですね。
 
「わかりました」という言葉には、
<聞きました><伝わりました><理解しました>といった複数の意味があります
そして「他人が誰かの話やその意図をどれだけ理解できるのか」という限界もあります。
 
その言葉のあいまいさや微妙な加減を「わかりました」ということで丸ごと無視できてしまう、便利といえば便利だけれど、とても乱暴な扱いです。
ですので、私は「わかりました」とは言いません。
「ちょっとわからないので、もう少し詳しく教えていただけますか?」なら良く使うのですけど。
 
では、相手に<あなたの言いたいことの内容は伝わりましたよ>と言いたい場合にはどういう言葉を選んでいるのでしょう?
おそらく、「わかりました」の代わりに、
「私にはこんなふうに聞こえました」
「こんな風に理解しました。だいたいあってますか?」
などと要約したり少し言い換えたりしながら、相手に確認を取ることで、
<あなたの言いたいことの内容は“このように”伝わりましたよ>
と伝えると思います。
 
メンタルヘルスにまつわる曖昧さを排除して、面接を回復につながるものとするためには、言葉は選んで正確に使っていくことが大切だと考えています。
今回はそんな私の言葉の使い方について、でした。