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ポリヴェーガル理論について その2 働く人のメンタルヘルスにどうつながるか

前回はポリヴェーガル理論という、
生物の進化に沿った自律神経系の発達の理論について書きました。

そして、ポリヴェーガル理論によれば、
人間はポリヴェーガルな自律神経系の働きにより、
人間社会で意見の食い違いや、ちょっとした問題が起きたときには、
まず、
腹側迷走神経系を使って「私は敵ではないですよ」という友好の合図を出し、
「話し合い、交渉」することで事態を解決しようとし、
次に、
それがうまくいかず、危機に陥ったときには、交感神経系が優位となり、「戦うか逃げるか」の反応で事態を打開しようとします。
そして、それもうまくいかなった時には、背側迷走神経系が優位になり、
「声が出ない、体が動かない、頭の中が真っ白になる」といった「凍りつき」が起こる、
というところまで説明しました。
 
でも、凍りつくことがすぐには、有利な結果には結びつかないような気がしますね。
 
 

|「凍りつき」は役に立つ|
個体が獲物として捕食者に襲われたとき、
「凍りつき」は生物にとって極限場面での生き残り戦略です。
死んだふりをすることで、他の動きのある個体に捕食者が気を取られ、逃げるチャンスが生まれるかもしれません。
傷を負ったとしたら呼吸も心拍も非常にゆっくりになることで傷からの出血を抑え、
仲間の助けや何かのチャンスが訪れることを待ちます。
そしてもし、死を迎えることになった時としても意識を失うことで苦痛を減らします。
そして、集団として考えたときには、ある個体が犠牲になることで、他の個体は逃げおおせられるでしょう。
 
もちろん現代の人間は食うか食われるかの世界にいるわけではありませんが、
危機的状況に陥った時の反応は、そういった生物としてのポリヴェーガルな自律神経系の働きによって強く影響され、自動的な反応が起きてしまうのです。
 
 
ポリヴェーガル理論は、性暴力の際に抵抗できなくなる「凍りつき」がなぜ起きるのか、について説明してくれます。
性暴力事件では、危機に対して抵抗を示さなかった、と被害者が責められたり、その苦痛への支援が得られなかったりすることがありますが
「声が出ない、体が動かない、頭の中が真っ白になる」といった「凍りつき」は、危機に対する自動的反応であり、個人が制御することはできません。
「戦うか逃げるのか」の選択ができない時には「凍りつき」が自動的に起きてしまうのです。
 
そしてこの反応の起こりやすさには個体差があります。
「凍りつき」が起きやすい人とそうでもない人とがいます。
 
 
|ポリヴェーガル理論と発達障害(個人的思索)|
ここからはポリヴェーガル理論と発達障害についての私の個人的な思索になります。
この「凍りつき」はアスペルガー障害などの発達障害特性がある方の反応の理解に役に立ちます。
想定外の事態が起きたときや、自分でどうしたらいいかわからない時に、「凍りつき」が起きてしまうことがあります。
叱責されたときに「凍りつき」、無反応になってしまう、
そして<お前、聞いてるのか!>などとさらに怒られてしまう。
 
発達障害当事者である漫画家の沖田×華さんの自伝マンガにもそういった場面が描かれています。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00369/121300007/?P=2
ここまでではないものの、無視をしているかのような固まっている状態に陥る発達障害圏の方にはよく出会います。
 
<ふつうはそうはならんじゃろ>というのがその不自由さな訳で、
まずはそういったことが起こるということ、
そしてそれは腹側迷走神経系の働きが暴走している状態、とポリヴェーガル理論では説明できること、
そういった理解が状況を認識するのには役に立つように思います。
 
 
|『とにかくやれ』か『とにかく寝ろ』|
と書いていると、
まさしく今日のJobPicks NewsLetterで、
”ビジネスパーソン向けYouTuber『ハック大学ぺそ』さんが受ける悩み相談の大半は、
『とにかくやれ』か『とにかく寝ろ』で解決できる”
といった話題が流れてきました。
 
これも、
危機に対する対応として
交感神経系を意識的に利用するか、背側迷走神経系を意識的に利用するか、
であって、
生物学的に合理的で強力な対処手段を使え、ということのようにも理解できます。
 

今回はそんな、ポリヴェーガル理論を知ることが、働く人のメンタルヘルスとどうつながるのか、
について書いてみました。
この項ここまで