若年者の市販薬などの濫用、過量服薬、OD：オーバードーズが止まらない。
私の勤め先の様な単科精神科病院にも
「ODしちゃってー」などとカジュアルに語る若人が増えている感覚はある。
総合病院の救急外来にはそれこそ掃いて捨てるほど運ばれてくるという。
従来の自殺企図目的の過量服薬と異なるのはその捉え方のカジュアルさだと思う。
リストカットとか
かつて「リストカットしてくる子ってどうしたらよいの？」と、同級生の救急医に聞かれたときのことを思いだす。
「うちの子のリストカットはどうしたら良いんですか？」と親御さんに聞かれたことも数知れず。
リストカットについては、ある時から＜鼻ほじりと一緒です＞と答えることに落ち着いていた。
自分でやっていることなので、外野である親にも医者にも止める手段はない。
鼻ほじりと一緒で、時期が来たら止めるようになる。
大切なのは、そのうちに止めるようになる、と思いつつ、「やめてほしい」という思いを持ちながら見守ること。
鼻をほじるのではなく、鼻が痒い時にはティッシュで鼻掃除をするとか、その時にはトイレで人目につかないようにするとか、そういった適切な対応手段を教え、そして待つ。
そのうちに別の手段を取るようになるのを。
罰を与えたり、ことさらに注目したりはしない。
それを止めるように話題にすれば、そこに焦点が当たってしまう。
消去すべき行動には注目せず、増えてほしい行動に注目し、評価するのは行動療法として基本のことだ。
呼称から
リストカットとか、「リスカ」とか、そういったカジュアルな呼び方をまずしない。
「カット」とか軽快な言葉で表すことは、言霊を大切にする精神科医として、避けるべきことだと思う。
呼び方は「手首自傷」「自傷行為」である。
「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」 – 2004/7/1
黒川 伊保子 (著)
https://amzn.asia/d/82gHTuK
怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか (新潮新書 78)amzn.asia
748円(2024年08月18日 23:18時点 詳しくはこちら)
言霊なんてそんないい加減な、と思われるかもしれないが、呼び方は大切である。
ダサい呼び方はブレーキになる。
かつて、「暴走族」を「珍走団」と称しよう、というアクションがあった。
暴走族自体が魅力を失っていったので、この「珍走団」という呼び方が成功したとは言い難いかもしれない。
でも、「珍走団とも呼ばれるものだ」という情報が暴走族の魅力を棄損することにはつながっているとは思う。
ODを言霊から考える
さて、ODである。
「おーでぃー」も「オーバードーズ」もカタカナ語でジャーゴンとして若人にカジュアルな魅力を出していないだろうか。
漢字で行くならば「過量服薬」なのだろうが、そもそも「不適切服薬」であったり、「薬物乱用」であったりもする。
この「OD」という呼称は医療ジャーゴンだったのではないか、と疑っている。
カルテ記載には略称は便利であるし、
鼻ほじりの薬物版をいちいち正確にカルテに記載するのを忌避するのにも役に立つ。
カタカナ語はちょっとかっこよげだ。
そこから当事者の言葉になるのはすぐである。
酩酊目的
過量服薬の害を解いても、その後遺症などの深刻さを説いても、
過量服薬という行為自体は彼らが選んでしているものなので止まらない。
過料服薬する若人の目的は、ほぼすべての場合、死に至ることを目的としてはいない。
薬物の不適切使用、乱用により、酩酊し、意識を飛ばしてうたかたの間、現世の苦痛を忘れることだ。
その現世の苦痛を根本的になくすには、この世の中の生きづらさ全体を正すことだろうけれど、
若人が成長する事、生きていくことは苦しいことだ。
全ての人に限界があるのだから、この世は矛盾に満ちているのだから。
おそらくどのようになっても、生きる苦しさがなくなることはない。
でもだからと言ってODに走るのは、
その生きづらさをカジュアルに解消するクールな手段のように映ってしまうのは、
ウェルテル効果とまでは言わないけれど、
やはりこの言葉が報道されるような、そういったファッションによるものであることも多いのだと思う
薬物による酩酊でうたかたの苦しさを忘れる。
すなわち「酔わなきゃやってられねーよ！」である。
アルコールの不適切使用と全く変わらない。
アルコール乱用には「アル中」という不名誉な呼称が用意されている。
それが良い事かどうかは置いておいても、「アル中」にはCOOLさはない。
脱力ネームのすすめ
そこで！
やはりOD：オーバードーズにも適切な脱力ネームを与えるべきだろう。
私論：
このようにラリッてしまいたい若人に送る呼称は、
＜ラリパッパ＞である。英字での略称はRPP。
カルテ記載もしやすい。
酩酊者であることを表現しつつ、パピプペポで脱力させる。
なにをバカな。と思うだろう。
私も思う。でも半分くらいは本気である。
ODとか言ってる若人を見たら、報道を見たら、
「RPPだねー」「らりぱっぱしてるねー」とつぶやいてみてほしい。
「OD：過量服薬をRPP:らりぱっぱで脱価値化！」
これが広まった時、「過量服薬とかダセエ」という世の中になるはず。
そんな日を待ち望む。
ちょっと今回はたわごとちっくに。
RPP：らりぱっぱと言霊の話でありました。