その1はほとんど一般的な話で終わってしまったので、
ここからはできるだけ具体的な話、職場での話をしてみましょう。
精神科医でも初期にはうつ病と区別がつかない
特に十分に問診の時間を取らず
患者「気持ちが沈むんです」
医者<ああ、うつ病ですねー>
医者<セロトニンが云々で、脳内ホルモンが赫々なので抗うつ薬出しときますねー>
とかやっている薬屋の手下にはまったく期待できない
といってよくよく話をしっかり聞いて、
それで診断を付けようとしている私でも、
初診の時には意欲低下や活気のなさしか汲み取れず、
診断を保留して治療を始めたものの、
しばらくして自宅で大混乱になって緊急入院になったケースであったり、
自分の関わっている期間は一進一退でくすぶっていたものの、
数年後の様子を聞いたら明らかな統合失調症になっていて驚いたケースは
何例か経験はある
正直、これがないというのは、
精神科医として答え合わせをして修練していくことを怠っているのだろう
医師の一番の師は患者さんですから。
診断書の病名
会社に出す診断書の中で病名がきかれることは少なくない。
休職のための診断書であったり、傷病手当金のための診断書であったり。
私自身は、その際に”統合失調症”とは、原則的に書かない。
よほど担当の上司さんにも直接会って、説明した上でもなければ、統合失調症とそのまま書くことはない。
一度もない、ということはないだろうが、
はっきりと書いたことがある記憶はない。
ではなんと書くのか、と言ったら”神経衰弱状態”と書いている。
状態像診断というもの。
診断書に嘘は書いてはならない。
虚偽診断書作成罪に当たってしまう。
ではなぜ”統合失調症”と書かないのか。
それは、その診断書をどう理解されるか、
病名が独り歩きしてどのように誤解されるか、
まったくわからないから。
患者さんにどんな不利益が起きるか予想できないから。
もう、一体誰に教わったのかも記憶にないけれど、
医師になった頃、そうするべきだと教わった。はず。
そして自分が後輩に指導する時にもそう教えてきたですよ。
職場での配慮
未治療の統合失調症の人が職場にいたとしたら、
率直に言って精神科医でもかなり厄介な状況。
職場なので事例性に従ってではあるけれど、
とにかく早く精神科治療に結び付ける。これしかない。
事例化するような状況なら、たぶん休養期間は必要になってくると思う。
入院までするかしないかはわからないけれど。
で、まともに治療されて職場復帰しようという状況で、
診断書に”神経衰弱状態”と書かれていたら?
それじゃあ、病気に合わせた適切な対応ができないじゃないか!?
とは私は全く思わない。
統合失調症であっても、うつ病であっても、
狭い意味での”病気”であれば、
労務管理上は”私傷病”であって、
仕事と治療の両立の上での原則は、
「ちゃんと服薬、規則正しい生活をして、仕事の上では無理をしすぎない」
以上。である。
もちろん個別のその人に合わせた配慮は必要だが、
それはごく当然。
でも、本当に統合失調症であったとすれば、
本人が不調であった時の様子と、本人に何がそのきっかけであったかを聞けば、
普通のうつ病や適応障害ではないな、と感じるとは思う。
でもそこからの仕事と治療の両立に置いて変わるところはない。
だから、ちゃんと精神科治療に結びついていて、
仕事に復帰できるような状態になっているのであれば、
統合失調症もうつ病も違いはない。
主治医からの仕事の上での配慮についての意見を確認し、
それに基づいて本人と配慮の内容を相談して実装し、
随時に本人の様子をみて、配慮の内容も見直しする。
Try & Err ですね。
すぐに治療に結びつかない時
問題となるのは、
なかなか治療に結び付かない時。
ではあるけれど、これはちょっと一般論では伝えにくい。
絶対的に言えるのは
「とにかく事例性をベースに判断する」「記録を付ける」「産業医に相談しましょう」かなー
産業医がうまく対応できるといいのだけれど。。。
精神科産業医の本領発揮!ではあるかもしれない。
でも、「天の時、地の利、人の和」といったものもあるので、
うまくいかない時もありましてね。。。
精神科産業医だからといって、
職場で困ってしまうような精神病のケースは、
簡単に対処できるわけではなく、やはり大変なのです。
でも、そんなハードなケースにも応えられるはず!と自分を励ましてやってきています。