おおた産業メンタルラボ

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”まともな産業医”でありたい。 「生きた産業保健法学」

今回は、入門向けではなく、
実務の中で専門家として振る舞っていくため、
産業メンタルヘルスのスペシャリストとして、
”役に立つ産業医”であるために、
そのために押さえておかなくてはいけないと思う本について。

まともな産業医であるために

自分が”役に立つ産業医”、”まともな産業医”であるためには何が必要なのか、
その必要条件はどんなことか、ことあるごとに考えている。
そんな中で、そこに一つの答えを提示してくれる書籍がでた。

「生きた産業保健法学」  – 2024/9/13
三柴 丈典 (著)
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”手続き的理性”の実践

自分の産業医としてのOriginalityを示すため、私はしばしば”精神科産業医”と名乗る。
”精神科産業医”そう名乗ること自体は難しくない。
精神科医が産業医として活動すれば”精神科産業医”なのだろう。
しかし「産業医は精神科医以外にしてほしい、期待したのに御託を並べるばかりでさっぱり役に立たない」という非難の声は、
たぶん私の被害妄想と幻聴ではない。
医師の中でも精神科医のうさん臭さと役に立たなさは良くある話で、まったく否定しがたい。
この人はホンモノだなあ、という”精神科産業医”にも、どうかなぁという人にも、あったことがある。

まあ”精神科産業医”のことは置いておくとして、
自分が”まともな産業医”、”役に立つ産業医”であることを伝えるために、何を目指していれば、どのようになことができればまともな方向性を実践していると言えるのか。
それは、この本の示す”手続き的理性”の必要性を顧問先企業に伝えられること、それを実践できることなのだと思う。

成書があるということ

本書は、私のいくつもの臨床的な疑問に対して回答を与えてくれたり、説明の根拠をもたらしてくれる。

自分の中でも有形無形に「こうするのが良い」と考えていたことではあっても、はっきりとした根拠が形作れていないことはしばしばある。
それがこのように成書となっていることで、相手に伝えるときの説得力が変わってくる。
いざとなったら「ほらここに書いてあるでしょ!」とできるのはとても力づけられる。

特に自分に響いたのは、
P,80「心理臨床における集団的守秘義務」
P.249 「精神的な疾患による休職者が復職する際は、原職務が相当と解される」
P.276 「司法判断を踏まえた休職命令の基準と手順」
といったところ。

三柴先生と自分の実践

著者の三柴先生は自分の産業臨床分野の師匠の一人である。
実務的なところでは三柴先生は法学者であり、自分とは戦う分野は接しながらもすれ違っているのだろう。
しかし、自分の思い描く理念を実社会で実現しようともがくことでは先達であり、
その三柴先生の理想の顕現は、自分の様な末端の産業医がその理想に近づいた産業医活動を実践していくことにあるのだと感じている。
つまり、自分がまともな産業医として活動することは自分のためであり、三柴先生のためである。
本書を読み終えて、そう強く感じた。

本書を受け止められる産業医、まともな産業医として活動する人が増えることを願いたい。
というか、まず自分がそうなる。

紹介文

いつもであれば目次を貼るところだが、本書は目次の大項目からは良さがさっぱり伝わらないので、
出版元である産業医学振興財団の紹介文を貼っておく
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内容:
産業保健実務に必須の “生きた法知識” を豊富な判例から平易にひも解く!
◆産業保健スタッフや人事労務担当者が身に付けるべきリスク管理の法知識を、過去の判例から明瞭に解説。
◆職場での健康情報の取扱いについて、予備知識・基本原則からスタッフ間での情報共有のあり方、記録の本人への開示、条件整備の必要性まで、Q&A形式で実務目線から明快に回答。
◆ハラスメントや休職・復職判定、合理的配慮提供義務、海外勤務と健康管理、化学物質の自律的管理など、職場の現代的課題への適切な措置と対応方法を、判例を読み解く中から提示・解説。
◆近年増加する産業医をめぐる裁判例を未然防止・適切な事後解決の観点から詳細に解説。

「生きた法」とは、”法の作り手の思いと使い手の悩みをくむ営み”を意味する。平たく言えば、法をめぐる人と組織に焦点を当てることである(はしがきより)。『産業医学ジャーナル』2016年39ー6~2022年45ー2に連載され好評を博した「産業保健と法」を大幅に加筆・修正し、新たな書き下ろしも加えた一冊。
今や産業保健活動に欠かせない「法の知識・洞察・現場実務への応用」をめぐるバイブル、ついに刊行!

目次などは下記リンク参照
https://www.zsisz.or.jp/shop/book/2024/09/post-6.html

産業保健活動における「生きた法知識」の重要性

SanpoNaviの三柴先生の記事も一読の価値あり。

〈解説:三柴丈典先生〉産業保健活動における「生きた法知識」の重要性
https://sangyoui-navi.jp/blog/484

〈解説:三柴丈典先生〉産業保健活動における「生きた法知識」の重要性産業医をはじめとしたスタッフには、メンタルヘルス不調者の休職・復職などの場面等で個別事情を踏まえた適切な判断が求められていsangyoui-navi.jp