産業医として対応を期待される状況のひとつは、
メンタル不調による休職からの復職時の対応です。
いくつか悩ましい状況はありますが、
中でも典型的なのが、「休職者が問題社員であった時」です。
今回はこの課題について書いてみます。
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
まずは
「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html
ですね。
これを押さえておかないのは論外。
しかしこれは医療の世界で言えば「ガイドライン」。
大枠ですね。
情報収集
まず「問題社員」の本人と会う前に、情報収集です。
何事にも”準備八割”
依頼されたからと言って徒手空拳で本人にノコノコ会うわけにはいきません。
・本人の問題について、
・問題についてのこれまでの会社としての取り組み
そしてこれを通じて、
・味方はだれか、どのレベルか
を確認します。
「問題」とは?
問題は
・業務能力の不足なのか、
・勤務中の態度や行状の問題なのか
そのどちらなのか
両方ということも少なくないですけど。
でも切り分けて把握します。
業務能力の不足
業務能力の不足であれば、
・問題が発生したのはいつからか。
・どのような不足があったのか
・その業務能力の不足は具体的に数値化できているか
・成果物の不足なのか、期日の遅れか
・どのような成果を期待しているのか
5W1Hでどのような問題であるのか把握する。
態度や行状
態度や行状については、
・いつ、だれに対して、どのような言動があったのか
協調性がない、といったあいまいな言葉や雰囲気ではなく、
具体的な行動として5W1Hでどのような行動があったのかを把握する。
問題についてのこれまでの会社としての取り組み
「問題」について、
・会社からはこれまでどのような指導がされてきたのか。
・これまでの指導は文書として記録に残っているか
・指導の内容、行った日時が記録されているか
・問題によって、どのような人事評価をされてきたか
口頭でしか指導されていないのか、
メールなど文章で指摘されてきているのか、
「改善指導書」が作られてきたのか、
指導はされて、能力や行状に問題があるとされてきているけれど、
人事評価は慣行により「標準」、
とかいうねじれた状況にあることも少なくありません。
状況把握によって
この状況把握は、
・その会社がどの程度の細やかさで社員の人材管理をしているのか、
・そして目の前の会社の担当者がどのくらい課題意識を持っているのか、
をつまびらかにします。
・性善説に拠って、まったく管理や工夫をしていない状況、
・困ってはいるけど、記録がなく、印象論や感想ばかりのような状況、
・現場は困って形にもしているけれど、人事労務が手を打てていない状況、
・困っていて、対応も工夫してはいるけれど、本人の能力や性向にフィットしていない状況、
などなど。
困った状況ばかりなのは、
細やかにできていて、うまくいっていたら対応には困っていないからですね。
まったく管理や工夫がされていないように見えるのは、
たいてい家庭的というか牧歌的な対応をしてきた会社。
これまでそのままで大きく困ったことがなかったのでしょうね。
昭和のままの、田舎の中小企業のイメージ。
昭和の時代に働いたことも都会で働いたこともないけど。
悪い会社だというわけではない。
むしろ逆で、良い会社だから、そのままで残ってきたのだと思う。
そう思わなかったことはない気がする。
だから自分の様な産業医が必要なのかな、と感じたり、
お役に立ちたい、と思ったり。
味方はだれか、どのレベルか
会社の水準をだいたい把握したうえで、
次に大切なのは、目の前の担当者をどうやって味方につけるか。
もちろん初めから味方なのだけれど、
表面的な付き合いだけでなく、
自分のやり方をどのくらい理解してくれて、社内で自分の代弁者になってくれそうかを判断したい。
これはそれまでの関係性や、自分のスタンスをどれくらい伝えられてきたかによって変わってくるけれど、
まだ付き合いが浅い、自分のスタンスが伝えられていない状況であれば、
より具体的に説明して理解者になってもらうように努めなくてはいけないし、
万が一、ほとんど協調できないようであれば、
そのケースへの対応が成功することへの期待値も下げておかなくてはいけない。
これは相手側の期待値と、自分の期待の両方。
今日は、
これまでのところ(過去)の情報収集のところまで。
続きます。