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産業医は何してるの? メンタル不調で休職した「問題社員」が、復職したいと言ってきたんです。 その7

そもそも、そんなことってあるかね?


「問題社員」とされていた人が、メンタル不調で休職となって、復職したいと申し出てきた。

「そんな、面倒な人が面倒な状況になるなんてそんな偶然、ないでしょ」
と感じるかもしれませんが、
産業場面でメンタルヘルスに関わっていると、
まったく珍しくない事態のように思います

なぜって、
「困っった人」は「困っている人」だから。
周囲に迷惑がかかるような状況になっている社員さんは、どこかしらバランスを崩して、生きにくくなってしまっている人だからでしょう。

むしろ、働きぶりに全く問題がなかったのに休職になる、なんてことの方が怖いですよね

そんな大変な人を復職させて大丈夫なのか、
再発を防ぐための配慮をどうしていくのか、
そして「問題」も改善してもらうためにはどうしたら良いのか、
と言ったことを書いてきました。

そして、
「困っている人」は変化するチャンスにある人。
なので「問題社員」が「困っている人」になった時はチャンスです。
「問題社員」の「問題」を改善するチャンスです。

産業医は何をしているのか


そんな上司さんや人事労務スタッフまでの会社としての総力戦の中で、産業医は何をしているのか。
そこに触れてみます。

産業医は、良くも悪くも職場の異分子です。
よそ者、エイリアンです。
仲間にはしてもらえません。
よそ者がもたらすのは変化であり、産業医が登場するということは、
これまでの偽解決のシステムを崩す、変化の象徴です。
産業医がシステムに加わるということだけでも変化の第一歩となります。

そして、
産業医にしかできないこと、
それは産業医による本人の病態の評価です。

本人は「メンタル不調」という病気であることを訴えています。
ほとんどは「うつ」ないし「適応障害」といった診断名でしょう。
であるとして、その診断がどの程度医学的に「病気」なのか。
医療や薬物療法によってどの程度回復が見込まれるのか。
別の言い方をすれば「疾病性」と「事例性」の割合を見定めること。
それが患者である「問題社員」に対するカウンターパートとしての
会社と産業医の役割です。

「問題社員」の味方になる


そして「問題社員」の味方になることです。
「問題社員」はとかく悪い色眼鏡で見られてしまいがちです。

実際にサボりであったり、性格がわるかったりで「問題」に至っている人もいましょうが、
状況や事情を聴いてみれば、
<実はそうだったのか、貴方も苦労していたのね>と
なることがほとんどです。
同情の余地が全くない人はほぼいません。
味方になるのはそれほど難しい事ではありません。

でも、産業医はしょせんはよそ者。
どんなに味方をしたって社内では大した力になれないのも事実です。
だがそれがイイ。だからイイ。
安全に味方になれますから。

全体を俯瞰的に見て、その場を回す


「問題社員」にとっては、自分のメンタル不調場面は初めての経験、人生の一大事ですが、
産業医にとってはそれなりのヤマ場ではあるものの、
初めから終わりまでいつか来た道、聞いたことのある状況です。
始まりも終わりもいくつかシナリオはあり、個別の違いもありますが、
それを見越して
復職して「問題」も軽減する望ましい状況と、
復職がうまくいかなかったときと、
そして「問題」に対するプランBとを考えたわけです。

つまり産業医は即興劇の台本を知っている監督の様な、
どのように動いてほしいか提案する演出家の様な、
さらに自分でも脇役として出演してしまう存在です。

でも大切なことは、主役は「問題社員」であり、その上司さんであるということ。
産業医は引き立て役にすぎません。

医師である産業医でなくてはならないところは体を張って示しながらも、
グダグダにならず、しっかりとした舞台が成立するように回す。
なんでも屋でしょうか。

余談ですが、
私が好きなのは、出来るだけピエロ役になることです。
間抜けなのは地なのでやりやすい。
一歩遅れていくようにして回していくのが理想とするところです。

産業医のめざすところは


でもね。
実際の「問題」の改善については、
バリッと改善するものではないと思ってます。
「問題社員」が本当にメンタル疾患メインであることが少ないのと同様、
そんなにインスタントなことは多くない。

でも、だからこそ、
「問題社員」が不調から回復して、
「問題」について少しでも取り組もうとする姿勢が出てきたら、
その小さな兆しを見逃さず光を当てて、
その芽を伸ばそうとすること、大きく育てること。
それが解決志向の産業医の本当の仕事というものだと思います。

長くなってしまいましたが、
メンタル不調で休職した「問題社員」が、復職したいと言ってきた、
は今回で一区切りにいたします。