この記事では、企業が抱える労務問題、特にメンタルヘルス対応における「社労士・弁護士」の役割と限界を解説します。予防労務の視点がなぜ必要かを、精神科産業医の視点から考察しています。
■ 社労士・弁護士が抱える“地方特有の課題”とは?
地方の中小企業では、社労士や弁護士との連携において以下のような問題が目立ちます:
- 定型業務(給与計算・就業規則作成)中心で、非定型なメンタルヘルス対応が手薄
- 経営者と士業の間に問題意識のズレがある
- 「火事が起きてから対処する」後手対応が常態化
これは労務の専門家として予防的な関与ができていないことの表れです。
■ 社労士が抱える“対応の限界”
「問題社員対応」や「メンタルヘルス不調者への対応」は、今や社労士に求められる非定型業務の代表例です。
しかし実際には、
- 特定社労士の肩書き=実力とは限らない
- いまだに給与計算だけが業務の中心のことも
- 「解雇はできません」と一辺倒な回答に終始
といった現実があり、経営者の支援にはつながっていません。
■ 弁護士もまた、予防の視点が弱い
労務トラブルが深刻化すると、弁護士の出番になります。しかしながら、
- 労働法が必須科目ではなく、知識にバラつきがある
- 問題発生後の対応に偏り、予防法務・予防労務が弱い
- メンタルヘルスに関するリテラシーが低い
という課題があります。最近は「企業側弁護士」という立ち位置をとる弁護士も増えてきましたが、まだ全体としては予防的関与に乏しい印象です。
■ 経営者の誤解が“無謀な労務対応”を招く
- 「解雇できない」と思い込み、何も手を打たない
- 逆に「いま解雇すれば大丈夫」と誤認し、即断で通告
- その結果、訴訟リスクの高い対応がなされてしまう
こうした行動は「例外的な話」ではなく、現実に企業で起きていることです。
■ 【提案】予防労務としてのメンタルヘルス対策を
企業に求められるのは、以下のような「予防労務」の実践です:
- 社内で早期発見・早期対応できる仕組みづくり
- 社労士・弁護士との定期的な労務レビュー
- メンタルヘルスの知識を共有する機会の提供
- 産業医や精神科医を含めたチーム対応の構築
“火事”になってからでは遅いのです。“ぼや”のうちに消せる体制を整えることが、これからの企業経営に必要です。
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■ まとめ:地方企業こそ、予防型の労務体制を
地方の中小企業では、「トラブルが起きてから」の対応しかしてこなかったことが多いですが、今後は“予防”こそがコストを抑え、企業の存続を支える道になります。
- 士業側は専門性と予防視点のアップデートを
- 経営者側は「困る前に聞く」という姿勢を
この両輪がかみ合えば、労務トラブルの多くは未然に防げるはずです。