今回は架空事例なぞ作ってみました。
架空事例:30代女性会社員Aさんの場合
Aさんは、企業の事務職として勤務している30代の女性です。もともと数年前に統合失調症と診断され、通院と服薬を続けながら仕事を続けていました。上司や一部の同僚には病気のことを伝え、勤務時間の調整やストレスの少ない業務への配慮を受けながら、これまで安定して勤務できていました。
新年度の人事異動により同僚メンバーが変わり、業務内容もすこし変化しました。本人の負担が増えないか心配されましたが、本人は意欲的に新しい業務にも取り組んでいました。
順調かに見えましたが、1か月ほどたって、睡眠が足りていないような様子で、これまでになくいらいらとした様子や、物音に過敏な様子が目立つようになり、仕事上のミスも増えました。
ある日、書類上の小さなミスがあり、そのことを指摘され訂正を求められたところ、「もういや!なんで私ばかり!」などと突然の大声を上げて泣き出し事務所内は騒然となりました。本人はその日は泣きじゃくったまま収まらず、早退しました。
翌日から欠勤し、数日して精神科主治医からの「病状が悪化しており、当面の間休職を要する」との診断書が提出され、休職となりました。
休職となって数日後、会社の人事部あてに本人からのメールで「上司から盗聴されていた。私は被害者だ。訴えたい」といった混乱した内容のメールが届きました。同様のメールが約20通続いたため、”まず休養に努めてほしいこと、執拗なメールは会社の業務と自身の休養の妨げとなること”を返答するとメールは収まりました。
約半年後、「本人の病状は回復し、復職可能である」との診断書が提出され、本人からも復職の希望がありました。
関係の深かった上司が本人と電話で連絡を取ると、「ご心配をおかけしました。早く復職して会社に戻りたい」と落ち着いたもともとのご本人の様子でした。
復職可能かどう判断しよう?
さあ、このような事例に対して、復職可能かどうか、どう判断しましょうか。
そして安全配慮義務の観点から、業務や周囲の仕事仲間へのマイナスの影響を避けるため、再発防止のためにもどのような点を確認したら良いでしょうか。
架空症例の経過のまとめ
・統合失調症という病気は予てからあった。
・仕事上、特に大きな変化や負荷がかかった様子はなかった。
・順調そうに見えたが、不眠や被害妄想をうかがわせる様子が出た。
・社内で激しい混乱、興奮を起こして休職に入った。
・休職してからも社内を騒がせるようなメールがあった。
・約半年で復職可能の判断が出た。
どんな復職のためにも必要なこと
まずは本人と面接して、
現時点では休職した時のような混乱がないか、その様子を確認する、これは基本。
つぎに主治医に再発防止のため、職場の勤務上、どのような配慮が必要か確認する。
これはどんな背景の人であっても面接の基本です。
これまでの様子をあまり知らない産業医から見てどうか、
そして本人と面識のある上司や人事部スタッフから見てどうか、
”大丈夫そうか”
まあ、直感です。
もちろんそれだけじゃ終わらない
そしてこの場合、統合失調症者であるので、
回復の確認、そして再発予防のために特に大切なポイントがあります。
それは、<休職に入る前の行動についてどう振り返れているか>。
そして振り返りができていたら、<休職を繰り返さないためにどう行動するのか>です。
続きます。