統合失調症者の回復の確認、
そして再発予防のために特に大切なポイントは、
1、＜休職に入る前の行動についてどう振り返れているか＞
そして振り返りができたら、
2、＜休職を繰り返さないためにどう行動するのか＞
が大切であると書きました。
事例要約：30代女性会社員Aさん
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Aさんは統合失調症の診断を受けながらも、職場の配慮のもと安定して勤務していた30代の事務職の女性です。新年度の人事異動により業務内容と周囲のメンバーが変わりましたが、Aさんは新しい環境にも意欲的に取り組んでいました。
しかし、1か月ほどで睡眠不足や情緒不安定、音への過敏さ、業務ミスが目立つようになり、ある日些細な指摘をきっかけに感情が爆発。職場で泣き出し、そのまま早退しました。その後は欠勤が続き、主治医からの診断により休職となりました。
休職中には、「上司から盗聴されている」など被害妄想的な内容のメールが会社に多数送られましたが、会社側の冷静な対応により収まりました。約半年後、病状が回復し、本人からも落ち着いた様子で復職の希望が示されました。
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よくある異論、反論
「なぜそんなわざわざ寝た子を起こすようなことをするのか」
「そんなことでショックを与えて、また具合が悪くなったらどうするんだ」
などというご意見はありましょう。
「それで再悪化したら、それこそあなたが錦の御旗のように言う安全配慮義務違反じゃないか！？」とかね。
困難な役割を避けたいとか、
まあまあまあ、でなんとなく流したいのを、
理由つけてる場合のほうが多いとは思いますが、
お気持ちはわからなくはないです。
しかし、but、だけれども。
これを避けてはいけない大きな理由があるのです。
それは、プレゼンティーズムの防止。
そして職場の健全さを守るためです。
プレゼンティーズムとは、職場の健全さとは、
出勤はしているけれど、
健康問題により十分に能力発揮ができない、
それが”プレゼンティーズム”です。
そして、プレゼンティーズムのもう一つの問題は、
本人の能力発揮が損なわれるだけでなく、
周囲の負担が増え、
職場の士気（モラル）が損なわれることです。
周囲の人の「なんであいつばっかり。。。」という気持ちですね。
職場はお互い助け合い、
個人の力ではなせないことを行う場であるはずですが、
押し付け合いになってしまいかねない。
腫れもの扱いを防止する
復職者がプレゼンティーズムの状態にしない、
それにはいくつもの課題や条件があります。
そして、そのためにできることの一つ、重要なポイントは、
復職者が腫れもの扱いされてしまうことをいかに避けるか、です。
そのためには、
本人にまつわって起きたアクシデントを、
きっちり片をつけておくことが大切です。
もし片をつけないでしまうと
休職に入る前に、本人の病状による言動で職場を動揺させ混乱させてしまった、
このことは、休職に至った本人にとっても、
一緒に働く周囲の従業員にとっても、
とても大きなアクシデントです。
このことをあいまいにしておく、
アクシデントと向き合わない、
無視することで起きるのは、
復職した後の本人の腫れもの扱いです。
それはそうですよね。
職場で騒ぎを起こしたかと思いきや、休職にはいり、しばらくしたら戻ってくるとケロッとしている（よくなってますから）。
周りの人にしてみれば、これまで通り普通に接してくれ、という方が無茶だと思います。
周囲とのコミュニケーションは取りにくくなり、
本人は孤立しやすく、
共同作業は困難になり、
職場のお荷物扱いになってしまう。
本人はプレゼンティーズムの状態になり、
職場の健全さは損なわれてしまいます。
復職のタイミングで片をつけることがとても大切
再スタートである復職というビッグイベントで、
これまでの事態にしっかりと触れておいて
それは過ぎ去った過去のこととして
ちゃんと片を付けておくことが大切です。
そのために必要なのが、
1、＜休職に入る前の行動についてどう振り返れているか＞
そして振り返りができたら、
2、＜休職を繰り返さないためにどう行動するのか＞
なのです。
「すみませんでした」ではない
具体的なところに入る前に、ありがちな誤解に触れておきます。
それは、＜休職に入った時のアクシデントについて謝罪を求めたいわけではない＞
ということです。
もちろん、反省の言葉としての「すみませんでした」は大切です。
職場でのコミュニケーションが取れるということですから。
そしてもっと大切なのは、
「今後このようなことを繰り返さないように、こう対策します」
という再発防止への取り組みです。
休職に至るアクシデントは仕事の上のミスと同じです。
謝罪をしたからと言って、そのミスが取り消しになるわけではない。
しかし、再発防止をして同じミスをしないからこそ、
その1回のミスは次の成功のもとになる。
そうしてスキルアップし、成長していく。
それが仕事というものであり、社会人に求められる姿勢だと思うのです。
子曰、過而不改、是謂過矣。
子曰わく、過(あやま)ちて改めざる、是(これ)を過ちと謂(い)う。
「論語」
↓
まちがったって、繰り返さなければいいの！ にんげんだもの。
（ワタクシ訳）
産業医学用語でいえば、
疾病性の水準から、事例性の水準に移すことで、
医療の話から、仕事の話に移すこと。
そんな事象のとらえ方、次元の切り替えが大切なのだと思います。
もっと言えば、”にんげん”扱いすること。
ちゃんとダメ出しというか、「もう繰り返さないでほしい」と要求されること。
それが”にんげん”扱いなのだと思うのです。
今回はここまで。
続きます。