障害者雇用の拡大
2024年4月、障害者の法定雇用率が2.5%へと引き上げられました。
さらに2026年7月には、2.7%にまで上昇する予定です。
あわせて、雇用義務が生じる企業の規模要件も「従業員43.5人以上」に拡大され、対象となる事業所はますます増えていくことになります。
国として、「障害者雇用をもっと広げよう」という明確な意思表示でしょう。
しかし、実際の企業の現場ではどうしたらよいものか。
雇用から定着、不調時の対応まで課題は山積です。
精神科産業医としては、本当はもっと職場の障害者雇用に悩む企業の担当者をサポートできないかと思っているのですが、
しかしながら未だ産業医には障害者雇用に関連したことが求められていない現状があるように感じていて、
何とかならんかな、なんて思ってます。
とまれ、
自分一人でうなっていてもどうにもならないので、
そんな時は他力本願。
今回は障害者雇用に関しての本を一冊紹介します。
精神障害・発達障害のある方とともに働くためのQ&A50
精神障害・発達障害のある方とともに働くためのQ&A50~採用から定着まで
– 2020/9/8
眞保 智子 (編集)
https://amzn.asia/d/dueFfsq
精神障害・発達障害のある方とともに働くためのQ&A50~採用から定着までamzn.asia
2,420円(2025年06月11日 08:01時点 詳しくはこちら)
出版社からの推薦文
●採用、実際に働いてから定着に至るまでなど、雇用の様々な場面における実践知を学べる。
●中小企業が知っておくべき・留意すべき点や対応策など、実際の対応・対話例や就業規則の条項例などを交えながら、具体的に解説。
●障害のある方とともに働く職場づくりに精通している企業の経営者や人事担当者、地域の就労支援を担う専門職や医師、研究者など総勢24名による執筆。
収録Qを一部紹介!
●“ナカポツ”・“シュウポツ”とは何ですか?
●就労を支えるある精神科医の哲学
●障害者雇用に向けた環境整備、従業員側の不安への対応
●どんなことを面接で聞きますか?
●「合理的配慮」は「特別扱い」ということですか?
●就業規則はどのようにすればよいでしょうか?
●モチベーションアップにつながる伝え方
●復職に向けて準備できることはありますか?
●最近、薬を飲んでいないようです。大丈夫でしょうか?
●病名・診断名にこだわらない
など
なかなかこうして障害者雇用に関する用語を改めて見直せる機会はないように感じました。
この本の良いところは、Q&A形式で事例に添って書かれているので、
とっつきやすく読みやすいこと。
はい、ワタクシ、本は読みやすいことが何よりだと思っております。
感動した一節
中でも、今回、一番「いい本だな」と感じた一説は、
「Q16 面接の進め方ー働く上での得意・不得意、障害特性の把握」
のこちら。
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(P62)
精神障害のある方々と一緒に働く同僚の皆さんを対象に調査したところ、症状について直接訪ねることへの不安が多く聞かれました。しかし、症状や対応については、やはり直接聞かなければ分かりません。それは、私たち精神医療の現場で働く専門職も同じです。
これまで当事者の方にも職場での対応のあり方について伺ってきましたが、職場でご自身の症状や求める対応などを聞かれることは不愉快ではないし、むしろ理解してくれよう(としている)と感じるという方がほとんどでした。
(中略)仕事で必要なことは率直に聞き、配慮等についても本人を含めた話し合いで決定していくことが原則です。
ーーーーー
ちゃんと自身のことを判断できる存在として扱うこと、
職場の仲間として自分自身のことを尋ねること、そういうことです。
ハレモノ扱い厳禁
結局のところ、「障害者だから」と
ハレモノ扱いしてしまうことは、
一緒に働く周囲の人の余計な負担を増やしてしまい、
結局のところ当事者も働きにくくなってしまう。
当事者も本当には望んでいないということです。
そして、本人の能力などを過小評価することは、パワハラの定義にもある「過小な要求」に該当してしまいかねません。
過小な要求:業務上の合理性なく、当人が持つ能力や経験に見合わないような程度の低い仕事を命じること
仲間として扱うこと
このあたり、Z世代の新人への対応で、
「注意するとすぐへこむ」「パワハラだといわれるのが怖くてこわごわ扱っている」と、
『ゆるブラックだからやめます』とびっくり退職されてしまう、
というのにも相通じるところがあるように思います。
目先のところで異質のものとして扱えば、
結局のところその対象は居心地が悪くなってしまい、
戦力になってくれることは望めない、
ということでしょう
結局のところ「同じ釜の飯を食った」感覚を作れるのかどうかが職場への帰属感や、心理的安全性を作っていくもののように感じています。
結局性根がおっさんだからでしょうか。
今回は障害者雇用にかかる書籍の紹介でした。