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精神科産業医が解説:パニック障害とは?職場で知っておきたい心の病気

近年、働く人々のメンタルヘルスが注目される中で、パニック障害は決して珍しい病気ではなくなってきました。強い不安や恐怖とともに動悸、呼吸困難、めまいなどの症状が突然起こり、本人にとっては命の危険を感じるほどつらい体験となることがあります。産業医として職場の健康管理を担う立場からも、パニック障害を正しく理解することは、早期対応や適切な職場環境づくりに欠かせません。

パニック障害の定義と特徴

パニック障害は、突発的に生じる「パニック発作」を繰り返すことを特徴とする不安障害の一種です。発作は数分から数十分程度続き、心臓が激しく鼓動する、息ができない、倒れそうになるといった身体的な症状を伴います。その経験が繰り返されることで「また発作が起きるのでは」という予期不安が強まり、生活や仕事に支障をきたします。特に通勤電車や会議など、逃げられない状況で起こりやすいと感じる方も多く、就労に直結する問題となりやすい点が特徴です。

職場で現れやすいサイン

職場におけるパニック障害は、遅刻や欠勤の増加、会議や出張の回避、集中力低下などの形で表れることがあります。本人が「体調が悪い」とだけ訴えることも多いため、周囲が単なる体力不良と誤解してしまうことも少なくありません。産業医は従業員の健康相談や面談の中で、不安症状や発作経験が背景にある可能性を見抜き、医療機関への受診を促す役割を担います。早期の受診と治療により、症状の軽快や再発予防につながるケースが多くあります。

治療とサポートの方法

パニック障害の治療は、薬物療法と認知行動療法を中心に行われます。抗不安薬や抗うつ薬により発作を抑える一方、心理的なアプローチによって「不安を避けずに向き合う」練習を進めることで再発を防ぎます。職場では過度なストレスや長時間労働を避け、安心できる就業環境を整えることが大切です。産業医は本人や上司と連携し、業務内容や働き方の調整を提案することで、無理のない形での職場復帰や継続勤務をサポートします。

職場環境づくりの重要性

パニック障害を抱える従業員にとって、職場の理解と柔軟な対応は回復の大きな助けとなります。過度なプレッシャーや孤立感は症状を悪化させかねません。そのため、オープンに相談できる雰囲気や、症状が出ても安心できる環境づくりが求められます。産業医は従業員と企業の双方に寄り添い、適切な情報提供や相談体制の整備を支援することで、長期的に働きやすい職場を実現する役割を担っています。

まとめ

パニック障害は突然の発作によって生活や仕事に大きな影響を及ぼす病気ですが、適切な治療とサポートにより十分にコントロールが可能です。職場においては、本人の努力だけでなく、企業や同僚の理解、そして産業医の関与が重要な要素となります。もし従業員や自身に似た症状が見られる場合は、早めに医療機関へ相談するとともに、産業医を通じた職場でのサポートを活用することをおすすめします。