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精神科産業医が解説:睡眠障害(不眠症)とは?働く人の心身に与える影響と対策

現代社会において、睡眠障害、特に不眠症は多くの働く人々が直面する問題です。長時間労働や不規則な生活リズム、職場のストレスは、睡眠の質を低下させ、心身の不調を引き起こす大きな要因となります。産業医の立場からみると、睡眠障害は単なる個人の健康問題にとどまらず、労働生産性や安全性にも深く関わる重要なテーマです。ここでは、不眠症を中心とした睡眠障害について、その概要、原因、職場への影響、そして具体的な対策について解説します。

睡眠障害(不眠症)の定義と種類

不眠症は、眠りたいのに眠れない、夜中に何度も目が覚める、早朝に目が覚めてしまうなど、睡眠の質や量に関する問題が持続する状態を指します。大きく分けると「入眠困難」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠感の欠如」の4つに分類されます。これらが1か月以上続き、日中の活動に支障をきたす場合、不眠症と診断されることが多いです。産業医が職場で従業員の健康相談を受ける際、このような訴えは非常に多く、早期対応が求められます。

睡眠障害の原因と背景

不眠の原因は多岐にわたります。仕事上のストレスや人間関係の問題、シフト勤務による生活リズムの乱れ、さらにはカフェインやアルコールの過剰摂取などが挙げられます。また、うつ病や不安障害などの精神的要因、糖尿病や高血圧といった身体的な疾患が背景にある場合も少なくありません。産業医としては、単に睡眠指導を行うだけでなく、背景に潜む疾患や職場環境の問題を見極めることが重要です。

職場における睡眠障害の影響

睡眠不足は、集中力の低下や作業効率の悪化につながります。さらに、交通事故や労働災害のリスクを高めるため、企業にとっても重大な課題です。慢性的な睡眠障害は、メンタルヘルス不調や長期休職の要因ともなり得ます。産業医は従業員の睡眠に関する状況を把握し、必要に応じて職場環境の改善を提案する役割を担います。例えば、長時間労働の是正や勤務シフトの見直しなどが、従業員の睡眠改善につながる場合があります。

睡眠障害への対応と治療法

不眠症への対応は、まず生活習慣の改善から始まります。寝る前のスマートフォン使用を控える、カフェイン摂取を減らす、規則正しい就寝時間を心がけるなど、睡眠衛生の徹底が基本です。それでも改善が見られない場合には、専門医による認知行動療法や薬物療法が検討されます。産業医は、従業員が適切な医療機関にスムーズにつながるよう支援することも大切です。

企業における予防と支援の重要性

企業ができる取り組みとしては、従業員への健康教育や睡眠に関する啓発活動が挙げられます。また、ストレスチェック制度を活用して従業員のメンタルヘルス状況を把握し、必要に応じて早期に支援を行うことも有効です。産業医はその中で、従業員一人ひとりの声に耳を傾け、適切な助言を行いながら、組織全体の健康維持に寄与します。

まとめ

睡眠障害、とりわけ不眠症は、働く人々の健康と企業の生産性に直結する課題です。放置すれば心身の不調を悪化させ、労働災害や休職につながるリスクもあります。日常的な睡眠習慣の改善や職場環境の見直しに加え、必要に応じて医療機関での専門的な治療を受けることが重要です。企業としては、従業員が安心して相談できる体制を整えることが望まれます。睡眠に関して悩みを抱えている場合は、早めに産業医や医療機関に相談することを強くおすすめします。