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精神科産業医が解説:摂食障害(拒食症・過食症)とは?職場で知っておくべきポイント

摂食障害は、主に「拒食症(神経性やせ症)」と「過食症(神経性過食症)」を中心とする疾患群であり、食行動に強い偏りが生じることで、心身に深刻な影響を及ぼします。特に働く世代では、仕事のストレスや人間関係、自己評価の歪みなどが発症や悪化に関与することが多く、職場においても無視できない課題です。ここでは産業医の立場から、摂食障害が職場に与える影響や支援のあり方について解説します。

摂食障害の定義と特徴

摂食障害は、食べる量や体重に対する極端なこだわりを背景に、心身に負担をもたらす疾患です。拒食症では体重減少と低栄養が顕著になり、生命に関わる危険もあります。一方、過食症では短時間で大量に食べる行動が繰り返され、自己嫌悪や嘔吐・下剤乱用などの代償行動を伴うことが多いです。いずれも「食行動の異常」だけでなく、自己評価やストレス対処の問題が深く関与している点が特徴です。

職場における摂食障害の影響

職場では、摂食障害によって体力や集中力の低下が生じ、業務の遂行に支障をきたすことがあります。また、心身の不調が続くことで欠勤や休職につながるケースも少なくありません。さらに、症状を隠そうとする傾向が強いため、同僚や上司が気づきにくい点も課題です。産業医は定期健康診断や面談を通じて、早期にリスクを察知し、必要に応じて医療機関との橋渡しを行うことが重要になります。

ストレスと摂食障害の関係

多くの摂食障害は、ストレスや心理的負担が引き金となって発症・悪化します。職場の過重労働、人間関係の摩擦、過度なプレッシャーはリスク要因となり得ます。また、完璧主義的な傾向を持つ人ほど摂食障害に陥りやすいとされます。産業医はストレスチェックや職場環境の改善に関与し、再発防止や症状の安定化に向けたサポートを行うことが求められます。

産業医によるサポートの具体例

産業医は、本人が安心して相談できる場を提供することが第一歩です。健康診断で体重や食習慣に異常が見られる場合、丁寧に声をかけ、医療機関の受診を勧めることがあります。また、休職・復職の判断に関しても、医療機関と連携しながら職場環境への配慮を調整します。さらに、上司や人事部に対しては、本人のプライバシーを尊重しつつ、業務負担の調整や配慮の必要性を伝える役割を担います。

職場でできる予防と支援

摂食障害の予防には、職場全体でのストレスマネジメントが欠かせません。長時間労働を避ける、休養を取りやすい雰囲気をつくる、相談しやすい職場環境を整えるといった工夫が重要です。また、栄養指導や健康教育を通じて、正しい食生活や心身のセルフケアを推進することも効果的です。産業医はこれらの取り組みに関与し、従業員が安心して働ける環境を支える役割を担います。

まとめ

摂食障害は、単なる食習慣の乱れではなく、職場における生産性や従業員の健康に大きな影響を及ぼす疾患です。早期の気づきと適切な対応が、回復への鍵となります。職場で症状に気づいた場合には、本人を責めるのではなく、安心して医療につながれるよう配慮することが大切です。必要に応じて産業医や専門医に相談し、職場全体で支え合う仕組みを整えることが、従業員の健康と企業の健全な発展につながります。