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精神科産業医が解説:心身症(ストレス関連疾患)とは?職場での理解と対応

現代の職場では、業務のプレッシャーや人間関係の摩擦など、ストレスを避けることは容易ではありません。その中で、心の負担が身体症状として現れる「心身症(ストレス関連疾患)」が注目されています。心身症は単なる体の不調ではなく、メンタルヘルスとの深い関わりを持つため、早期の理解と対応が重要です。ここでは産業医の視点から、心身症の基礎知識や職場での取り組みについて解説します。

心身症の定義と特徴

心身症とは、心理的ストレスが主な要因となって身体に症状が現れる病態を指します。代表的な例として、胃潰瘍、過敏性腸症候群、慢性頭痛、緊張型頭痛、皮膚疾患(じんましんや湿疹など)が挙げられます。特徴的なのは、身体的な検査では大きな異常が見つからないにもかかわらず、日常生活に支障をきたすほど強い症状が持続する点です。職場では欠勤や集中力の低下を引き起こしやすく、早期に気づくことが求められます。

発症に関わるストレス要因

心身症はストレスと密接に関連しています。長時間労働、過剰な責任感、対人関係の摩擦といった職場要因はもちろん、私生活における不安や喪失体験も影響を与えます。ストレスが自律神経やホルモンバランスを乱し、体調に反映されるのです。特に真面目で責任感が強い人ほど心身症を発症しやすい傾向があります。産業医は従業員の働き方や人間関係を把握し、ストレス源を軽減する視点を持つことが大切です。

心身症とメンタルヘルスの関係

心身症は、うつ病や不安障害といった精神疾患と区別されることもありますが、両者はしばしば重なります。身体症状が長く続くことで気分が落ち込み、うつ状態に移行するケースも少なくありません。逆に、気分障害の一部として身体症状が前面に出る場合もあります。そのため、単なる身体の病気と捉えるのではなく、心と体の両面からのアプローチが必要です。

職場における産業医の役割

産業医は、従業員が心身症を発症した際に適切なサポートを提供する重要な役割を担います。まずは定期健康診断や面談で、体調不良の背景に心理的要因が隠れていないかを確認します。さらに、ストレスチェック制度を活用し、リスクの高い部署や従業員を早期に把握することも可能です。症状が強い場合は医療機関への受診を勧め、復職支援や勤務環境の調整を行うことが求められます。

予防とセルフケアの重要性

心身症を防ぐためには、個人のセルフケアと組織全体での取り組みが不可欠です。十分な休養、適度な運動、バランスのとれた食事は基本ですが、職場のサポート体制も大切です。例えば、相談窓口の設置や柔軟な働き方の導入は従業員の安心感につながります。産業医はこうした仕組みづくりに関わりながら、従業員が安心して働ける環境を整える役割を担います。

まとめ

心身症(ストレス関連疾患)は、心の不調が体に現れる代表的な病態であり、職場でも無視できない問題です。身体症状だけを見ていると見落とされがちですが、その背景にある心理的ストレスを把握し、適切に対応することが重要です。従業員自身がセルフケアを実践するとともに、組織として産業医を活用し、早期発見・早期対応に努めることが、心身の健康を守り、生産性の維持につながります。