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精神科産業医が解説:休職と復職の正しい理解と実践

職場におけるメンタルヘルスの問題は年々増加しており、休職や復職の場面に直面する企業や従業員も少なくありません。心身の不調から休職を余儀なくされた社員が円滑に復職するためには、正しい知識と適切なサポートが欠かせません。本記事では、産業医の立場から休職と復職の流れや注意点を整理して解説します。

休職の基本的な考え方

休職とは、病気やメンタル不調などにより通常業務を続けられない状態になった従業員が、一定期間仕事を離れる制度です。一般的には就業規則に基づき、医師の診断書を根拠として企業が判断します。特にメンタル不調の場合は、業務への集中力や生活リズムの維持が難しくなることが多く、早めの休養が回復への第一歩となります。休職は「働けない状態を無理に続けない」ための仕組みであり、本人の健康回復を目的としています。

復職のプロセスと産業医の役割

復職に際しては、まず主治医の診断書が提出されるのが一般的です。しかし、それだけでは復職が即時に認められるわけではありません。企業側では、産業医による面談や職場復帰判定が行われます。面談では、症状が安定しているか、業務に支障なく従事できるか、再発リスクがどの程度あるかを確認します。復職は「単に仕事に戻る」ことではなく、「継続して働ける状態かどうか」が重視される点が特徴です。

リワークプログラムの活用

復職をスムーズに進めるために有効なのがリワークプログラムです。これは、休職中の従業員が復職前に生活リズムを整え、職場で必要な集中力や対人スキルを回復するための支援プログラムです。医療機関や地域の専門施設で提供されることが多く、模擬的な業務体験やグループワークを通じて復職準備を進めます。産業医はリワークの利用を提案し、その進捗を企業と共有しながら復職可否の判断に活かします。

復職後のフォローアップ

復職後は、短時間勤務や業務量の調整など、段階的に負荷を戻していくことが望ましいです。産業医は復職後も定期的に面談を行い、心身の状態や職場環境を確認します。さらに、上司や人事部と連携し、無理のない勤務体制を維持するよう助言します。復職初期に過剰な負担をかけると再休職につながるため、フォローアップは欠かせません。企業全体で「復職を支える文化」を形成することが重要です。

企業に求められる制度と環境づくり

休職や復職が適切に機能するためには、企業側の制度整備が不可欠です。就業規則に休職期間や復職の手続きが明確に規定されているかを確認し、従業員が安心して申請できる環境を整える必要があります。また、職場全体でメンタルヘルスに関する理解を深めることも大切です。産業医と企業が協力して、従業員が回復に専念できる体制を築くことが、長期的な人材活用と組織の安定につながります。

まとめ:休職と復職を成功させるために

休職と復職は、単なる制度運用ではなく、従業員の回復と職場適応を支える大切なプロセスです。本人、主治医、産業医、企業の人事部門が連携して取り組むことで、スムーズな復職と再発防止が実現します。企業にとっても従業員にとっても、安心して働き続けられる環境づくりが最も重要です。対応に迷った場合は、早めに産業医へ相談することをおすすめします。