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健康診断結果の事後措置とは?産業医の対応フローを徹底解説

企業における健康管理の一環として実施される「健康診断」は、従業員の健康状態を把握し、疾病の早期発見・予防に役立ちます。しかし、健診そのものが目的ではなく、重要なのは「健康診断結果に基づく事後措置」です。特に、産業医の役割はこのプロセスで極めて重要です。本記事では、産業医の視点から、健康診断後にどのような対応を行うべきか、そのフローとポイントを詳しく解説します。

健康診断結果の事後措置とは何か?

事後措置とは、健康診断の結果に応じて、労働者の健康保持・増進を目的として講じる具体的な対応のことです。労働安全衛生法第66条の4に基づき、事業者には「必要な措置を講じなければならない」とする義務が課せられています。単に健診結果を通知するだけでは不十分で、実際に健康リスクが見られる従業員に対しては、医師の意見を聴取し、その後の勤務や生活に反映させる必要があります。

産業医の役割と法的責任

産業医は、健康診断結果に基づいて医学的な見地から適切な助言・指導を行い、事業者に対して改善措置を提案する役割を担います。高血圧や糖尿病、メンタルヘルスのリスクなどがある場合、就業上の配慮(労働時間の調整や配置転換など)を提言することもあります。労働者本人の同意を得た上で、個別面談や職場訪問などを通じて実情を把握し、職場の健康管理体制を支援します。

産業医が行う事後措置のフロー

1. 健診結果の確認とリスクの抽出

まず、健康診断結果を確認し、所見ありの従業員をピックアップします。血圧・血糖・肝機能・心電図などの異常所見に注目し、労働者の健康リスクを分類・評価します。事業者との連携のもと、必要に応じて再検査や精密検査を勧めます。

2. 本人への通知と面談の実施

次に、所見のあった従業員へ結果を通知し、本人との個別面談を設定します。この面談では、診断結果の意味やリスク、今後の対応方針などを丁寧に説明し、生活習慣の改善指導を行います。産業医は中立的立場から、本人が安心して話せる環境づくりも重要です。

3. 就業上の措置の判断と意見書の提出

産業医は、健康状態と業務内容を踏まえて、就業上の措置(作業時間の短縮、深夜業の制限など)について意見書を作成します。この意見書は、事業者が適切な労務管理を行うための重要な判断材料となります。なお、意見書の提出には本人の同意が必要です。

4. 継続的なフォローアップ

事後措置は一度きりで終わるものではありません。生活習慣病の改善やメンタルヘルス対策などは長期的な支援が求められます。産業医は定期的にフォローアップ面談を実施し、必要に応じて職場環境の見直しを提言します。企業全体の健康リスク管理に資する活動を継続的に行うことが理想です。

企業に求められる産業医との連携体制

健康診断結果の事後措置を適切に進めるためには、企業と産業医の密接な連携が不可欠です。健診結果の迅速な共有、面談設定の調整、意見書の反映など、スムーズな運用体制を整えることが重要です。また、産業医が単なる形式的な存在ではなく、組織の健康戦略に積極的に関与できる環境づくりも企業の責務です。

まとめ:事後措置を通じて真の健康経営へ

健康診断は単なる義務ではなく、従業員の健康と企業の生産性向上を両立させるための貴重なツールです。その効果を最大化するには、産業医の専門性を活かした事後措置が欠かせません。結果の放置は法的リスクにもつながるため、専門家と連携し、適切な対応を継続的に行うことが重要です。企業はぜひ、信頼できる産業医との協力体制を構築し、健康経営の実現を目指しましょう。