おおた産業メンタルラボ

ブログ・お知らせ

産業医の定期訪問の内容に決まりはあるのですか?産業医の立場からわかりやすく解説

労働者の健康管理や職場環境の改善のために設置される産業医。なかでも「定期訪問」は、企業の人事担当者や経営者にとって重要なテーマです。「訪問時に何をしなければならないのか?」「内容に決まりはあるのか?」といった疑問を持つ方は少なくありません。

この記事では、産業医の立場から、定期訪問の内容に関する法的な決まりや実務上のポイントを詳しく解説します。

定期訪問の内容には一定の決まりがあります

産業医による定期訪問の内容は、労働安全衛生法やその関連通知により、一定の事項が義務づけられています。具体的な内容については厚生労働省の通知(平成18年3月31日基発第0331008号)などに基づき、企業と産業医が連携して実施すべきことが定められています。

定期訪問で行うべき主な内容

1. 作業場の巡視

産業医は、職場の実態を把握するため、実際に作業場を巡視し、衛生状態や作業環境を確認します。これは労働者の健康障害を予防する上で欠かせません。

2. 健康管理体制の確認

定期健康診断の結果の把握や長時間労働者の面談状況、ストレスチェックの実施状況など、健康管理に関する体制をチェックします。

3. 労働者との面談

必要に応じて、長時間労働者や体調に問題を抱える労働者との個別面談を行います。この面談は、企業が労働者の健康状態を把握し、必要な配慮を行うためのものです。

4. 衛生委員会への参加

50人以上の事業場では衛生委員会が設置されており、産業医はこれに参加して助言を行います。ここでの議論は、職場全体の衛生管理方針に直結します。

よくある誤解

「産業医の訪問は形式的なもので、内容に制限はない」という誤解があります。しかし、産業医の役割は法的に定められており、職場環境や健康管理の実効性を高めるための重要な業務を担っています。巡視や面談を省略することは、法令違反になるリスクもあります。

実務での注意点

産業医の定期訪問を有効に活用するためには、以下のような点に注意が必要です:

  • 訪問予定日には関係部署が対応できるよう事前調整を行う
  • 面談対象者の選定や資料(健診結果など)の事前準備
  • 産業医からの指摘事項の記録と改善対応のフォローアップ

また、訪問結果をきちんと記録しておくことで、労基署対応や社内改善にも役立ちます。

産業医としての支援内容

産業医は単なる「健康診断のチェック役」ではなく、職場全体の健康リスクを低減させる専門家です。以下のような支援が可能です:

  • 作業環境や労働時間に関する助言
  • メンタルヘルス不調者への対応方針の策定
  • ストレスチェックの分析と職場改善策の提案
  • 産業保健体制全体の構築支援

人事・総務部門との連携を密にし、経営層へ健康経営の視点から助言を行うことも増えています。

まとめ:定期訪問を企業の健康経営に活かしましょう

産業医による定期訪問は、法令で定められた重要な業務であり、その内容には一定の決まりがあります。企業としても形式的な対応ではなく、職場の実態に即した健康管理体制を整えることが求められます。

産業医の助言を積極的に活用し、働きやすく健康的な職場環境づくりを進めていくことが、長期的には企業の生産性や従業員満足度の向上にもつながるでしょう。