ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づいて2015年12月から施行された制度で、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。従業員が自らのストレス状態を把握し、必要に応じて医師との面談や職場改善につなげることが狙いです。常時50人以上の労働者を雇用する事業場には年1回の実施が義務付けられており、企業にとっては法的義務を果たす重要な施策となります。
ストレスチェック制度における産業医の役割
ストレスチェック制度において、産業医の果たす役割は極めて重要です。まず、使用する調査票の内容や評価方法について意見を述べることが求められます。また、ストレスチェックの実施後に高ストレス者と判定された従業員が申し出た場合、医師による面接指導を行うのも産業医の責務です。面接指導では、労働者の健康状態を把握したうえで、必要に応じて労働時間の短縮や業務内容の変更などを企業に勧告することが求められます。
産業医の関与義務とその法的根拠
労働安全衛生法第66条の10では、ストレスチェック制度に関する産業医の関与が明文化されています。これは単なる協力義務ではなく、法的に位置づけられた「関与義務」であり、企業は産業医との連携を怠ると労基署の是正指導や行政指導の対象となり得ます。特に、面接指導の実施や記録の保存、報告義務などについては厳格な運用が求められます。社労士や行政書士といった士業とも連携し、法令遵守の体制を構築することが重要です。
ストレスチェックの結果をどう活かすか
ストレスチェックは単に結果を通知して終わりではありません。産業医は集団分析の結果を基に職場のリスク要因を分析し、企業に対して職場環境の改善提案を行う役割も担っています。これにより、メンタルヘルス不調の予防だけでなく、生産性の向上や離職率の低下にもつながる効果が期待できます。さらに、産業医が経営層と対話しながら具体的な改善施策を提案することで、企業全体の健康経営が推進されます。
まとめ:専門職との連携で制度を有効に活用する
ストレスチェック制度は、形だけの実施では効果が限定されます。産業医をはじめ、社労士や行政書士などの専門家と連携し、法的義務の履行だけでなく、従業員の健康維持や組織改善にまでつなげることが重要です。特に面接指導や職場環境改善といったフェーズでは、産業医の専門的な知見が不可欠です。制度を形式的にこなすのではなく、実効性をもたせるためにも、専門職との連携体制を整えることが今後の課題と言えるでしょう。
