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産業医が解説:「医師による面接指導」の対象者と実施方法

長時間労働や強いストレスが続くと、睡眠不足や疲労感だけでなく、血圧の上昇、集中力の低下、気分の落ち込みなどが現れ、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調につながることがあります。「医師による面接指導」は、こうした健康障害の兆候を早期に把握し、必要な休養や働き方の見直しにつなげるための制度です。

医師による面接指導とは

医師による面接指導とは、医師が労働者の勤務状況、疲労の蓄積、心理的な負担、心身の状態を確認し、本人に必要な保健指導を行う仕組みです。面接後は、事業者が適切な就業上の措置を講じられるよう、医師が医学的な意見を伝えます。

一般の診療とは異なり、面接指導の主な目的は病名を確定することではありません。健康を守りながら働き続けられる状態か、勤務時間や業務内容の調整が必要かを判断することにあります。治療が必要と考えられる場合には、医療機関への受診も勧めます。

長時間労働で対象となる人

一般の労働者では、休憩時間を除き、1週間当たり40時間を超えて働いた時間が1か月当たり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる場合が対象です。この場合、本人からの申出を受けて、事業者が医師による面接指導を実施します。

事業者は、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者に対し、超過した時間を速やかに通知する必要があります。本人が制度を知らず申出が遅れることのないよう、面接指導の申出方法や相談窓口も併せて案内することが重要です。

申出がなくても面接指導が必要な人

研究開発業務に従事する労働者については、時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超えた場合、本人の申出がなくても面接指導を実施しなければなりません。月100時間以下でも、月80時間を超え、疲労が蓄積している本人から申出があれば、一般の労働者と同様に対象となります。

高度プロフェッショナル制度の対象労働者についても、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた部分が、1か月当たり100時間を超えた場合には、本人の申出を待たずに面接指導を行う必要があります。

高ストレス者に対する面接指導

ストレスチェックで高ストレス者に選定され、検査の実施者が医師による面接指導を必要と判断した場合も対象となります。ただし、原則として労働者本人が事業者へ申し出ることが必要です。

面接では、ストレスチェックの点数だけでなく、仕事の負担、職場の人間関係、周囲からの支援、睡眠や食欲、抑うつ症状などを総合的に確認します。面接指導の申出を理由とする不利益な取扱いは認められません。

面接指導を実施するまでの流れ

事業者は、まず労働時間を毎月把握し、対象となる可能性がある労働者を確認します。対象者には労働時間の情報と申出方法を通知し、申出があった場合や申出不要の基準に該当した場合は、速やかに面接日を調整します。

面接を担当する医師には、労働時間、深夜勤務や休日勤務の回数、業務内容、出張、勤務形態、今後の業務見通しなどを事前に伝えます。面接指導を行う医師は必ずしも事業場の産業医に限られませんが、職場の状況を理解している産業医が担当すると、より具体的な就業上の意見につなげやすくなります。

産業医が面接で確認する内容

産業医は労働時間の数字だけで健康リスクを判断しません。連続勤務、休日日数、夜勤、交代勤務、通勤時間、業務量、責任の重さ、職場の支援体制なども確認します。

健康面では、疲労感、睡眠、食欲、頭痛、動悸、息切れ、胃腸症状、血圧、気分の落ち込み、不安、集中力の低下、飲酒状況などを確認します。持病や治療中の病気がある場合には、現在の勤務が症状を悪化させていないかも重要な判断材料です。

面接後に行われる就業上の措置

面接後、医師は事業者に対し、通常勤務が可能か、何らかの配慮が必要かについて意見を述べます。具体的な措置には、時間外労働の制限、業務量の軽減、担当業務や就業場所の変更、深夜勤務や出張の制限、休暇の取得、一定期間の休業などがあります。

事業者は医師の意見と本人の状況を踏まえて措置を決定します。措置を講じた後も、産業医が再面談を行い、睡眠や疲労の改善状況、業務調整が機能しているかを確認することが大切です。

プライバシーとオンライン面接の注意点

面接で扱う情報には、病歴や心理状態などの重要な健康情報が含まれます。面接内容のすべてを上司や人事担当者へ伝えるのではなく、就業上の措置に必要な情報に限定して共有することが原則です。

オンラインでの面接指導も可能ですが、医師と労働者が表情や声を相互に確認できること、映像と音声が安定していること、情報セキュリティとプライバシーが確保されていることが必要です。医師が十分な評価を行えないと判断した場合は、対面での面接に切り替えます。

産業医の立場から重視したいポイント

月80時間は重要な基準ですが、その時間を超えるまで健康対応を始めなくてよいという意味ではありません。夜勤が多い人、持病がある人、強い心理的負担を抱えている人、育児や介護によって休養時間を確保しにくい人は、より短い労働時間でも不調が進む場合があります。

事業場では、法定基準だけでなく、月45時間を超えた段階から健康状態を確認するなど、独自の基準を設けることが望まれます。本人が不調を訴えてから対応するのではなく、労働時間の増加や勤務状況の変化を早期に把握し、産業医へ相談できる体制を整えることが予防につながります。

まとめ

医師による面接指導は、長時間労働者や高ストレス者の健康状態を確認するだけの面談ではありません。医学的な評価をもとに、労働時間や業務内容を見直し、健康障害を防ぐための制度です。

労働者は、対象基準に該当した場合や、疲れが取れない、眠れない、気分が落ち込むといった変化がある場合には、早めに相談することが大切です。事業者は、対象者の把握、申出の案内、プライバシーの確保、面接後の就業上の措置までを一体的に運用し、必要に応じて産業医の助言を活用しましょう。