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産業医が解説:「医師による面接指導」の対象者と実施方法

過重労働やストレスによる健康障害を未然に防ぐため、労働安全衛生法では「医師による面接指導」が制度化されています。産業医は、従業員の心身の健康を守るため、この面接指導を通じて職場のリスクに早期に対応する重要な役割を担います。本記事では、対象者の範囲と面接の進め方について、産業医の視点から解説します。

「医師による面接指導」の対象者とは

面接指導の対象となるのは、主に長時間労働や高ストレス状態にある従業員です。具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 1か月あたりの時間外・休日労働が100時間を超えた従業員
  • 1か月あたりの時間外・休日労働が80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる従業員
  • ストレスチェックで高ストレスと判定され、本人が申し出た場合
  • 心身の不調を訴えており、医師の判断が必要とされる場合

面接指導の目的と重要性

面接指導の主な目的は、長時間労働やストレスによる健康リスクを早期に発見し、適切な措置を講じることです。従業員の健康状態を直接確認し、必要に応じて就業上の配慮や医療機関の受診を勧めることで、深刻な健康障害の発生を防ぎます。

面接指導の実施方法

対象者の選定と通知

企業は労働時間の実績やストレスチェックの結果をもとに、面接指導が必要な従業員を特定します。対象者には面接指導の目的と内容を説明し、同意を得たうえで面談を設定します。対象者が拒否した場合にも、産業医としての助言は重要です。

面接の実施と内容

面接は1対1で行い、産業医が労働時間、睡眠状況、ストレスの要因、体調などを丁寧に確認します。面談時間は30分〜1時間程度が一般的で、話しやすい環境を整えることが重要です。必要に応じて、業務の軽減や勤務形態の変更を提案することもあります。

記録とフォローアップ

面接結果は記録として適切に保管し、必要に応じて人事部門や管理監督者と連携して対策を検討します。継続的なフォローアップも重要で、再面談や健康観察を通じて従業員の状態を見守ります。

産業医としての注意点

面接指導では、従業員のプライバシー保護と信頼関係の構築が最も重要です。また、医学的な見地から的確な判断を下すため、面談中の観察や聞き取りには高い専門性が求められます。必要に応じて専門医療機関との連携も視野に入れるべきです。

まとめ

「医師による面接指導」は、産業医が労働者の健康を守るうえで不可欠な制度です。適切なタイミングで実施し、従業員の状態に応じた対応を取ることで、職場におけるメンタルヘルスや過重労働のリスクを大きく軽減できます。制度の理解と実践が、健康で持続可能な職場づくりにつながります。