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会社の準備を見守り、対策を立てる。復職希望に精神科主治医は その3

前回は、復職をソフトランディングさせていくためには、
復職診断書には「異動が必要!」とか書かない、
「復職後は元職復帰」というのは、
厚生労働省のガイドライン通りであるし、
精神科の基本にも沿っているから、と書いた。

そして、残るは、
「元職復帰はまあわからなくはないけれど、
仕事内容が変わって、そこから不適応ーメンタル不調になった場合はどうするの?」ということへの対応。

でも、不適応からの不調の時は?


メンタル問題からの復職の際は、元職復帰が原則!と言うけれど、
仕事内容が変わったり、多忙な状態になったために、
不適応状態になって、メンタル不調になった人はどうするのか。

そう、そこがど真ん中のところですしね。

あえて言い切ってしまうと、
ここは主治医の側からの余計なアプローチは不要。

なぜって、そこは会社が考えるものだから。
会社側だっておバカじゃない、そう考えること。

会社は社員の復職準備をするもの


社員が環境が変わったことによって不調になったとしたら、
会社だってそのきっかけについて考えている。
つまり、同じことが繰り返さない、されないように対策を取るということ。

それは、
業務分担の見直しであったり、
人員配置であったり、
指示命令系統の見直しであったり。

これは会社の方が行っていく配慮であって
外部の人間がとやかく言うことではない。
従業員だって同じこと。

もっと言えば、
外部の人間が言わないと動かないとしたら、
そんな会社には戻らない方が良い。
と私は思うし、
病状から回復して冷静さを取り戻した患者さんもそう思うはず。

言わずもがな、の例え


「子:そろそろ宿題をやらなくちゃなー」
と思っているところに、
「親:すぐに宿題やりなさい!!」
と怒ってみたら、
「子:今やろうと思ったのに!!」
ってなる。
お約束。
当然のことは言わない方が良いことが多い

「親:そろそろご飯の1時間前だねー」
(子:もぞもぞ宿題やり始める)
(親:あえてエライ!とか言わない。
冷たい顔はせず、でも無視もせず見ている様子は見せて、おいしい夕飯に腕を振るう)
というのがまあまあ理想的な展開。

例え、子供が寝る前に慌ててやっていたって、
それもまた教育ではないですか。

準備を任せるための準備


会社側の受け入れ準備は会社に任せる。
そのために主治医と患者は、
<そろそろ戻るで、準備始めるやでー>と伝えて、準備を促す。

良質な会社であれば、
「復職にあたってはこんな配慮をしようと思うのだけれど、どうだろう?」
と本人に打診というか、下調べがあるはず。
さらによろしい会社なら、
主治医にも「ほかに医学的に必要な配慮事項がありますか?」と聞いてくる、はず。

それがないような会社に変化を求めたってダメ。

時には理解が追い付かないこともある


そんなダメな会社でも、
患者さんが「どうしても戻りたい!!」というのならば、
それはそれで主治医として味方していかなくてはいけない。
<ダイジョブかなあ、無理しなさんなよ>とか言ったり思ったりしながら。

きっと主治医なんかにはわからない良さであったり、
患者さんにとってのメリットがあるはず。

まとめ


ここでのまとめとしては、
会社の変化はあくまで会社主導で。

主治医の役割は、「そろそろ準備始めてやー」と促すこと。

その会社からの対策の仕上がり具合をチェックして、
その新しい状況に対するサバイバルの工夫/作戦を
従業員である患者さんと練ること。

それ以上は蛇足。

わかってないなー、というご意見、あるでしょうね


でもきっと、こう書いてくると、
主治医のお立場からは、
「でも、患者が『異動が必要って書いてほしい』っていうねん」
というぼやきだったり、
「こいつわかってナイナー」
という突っ込みが入るはず。

そんな流れで、
”復職”という治療上の一大事、ルビコン川を渡るにあたって、
主治医が患者/従業員に対してどう接するべきか、
いや、私がどうした方が良いと考えるか、
そんなことを書きたいのだけれど、
そこはまた次回に。