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「就業判定」とは?産業医が行う復職判断の基準とは

メンタルヘルス不調や身体的な疾患・けがなどにより休職していた従業員が職場復帰を希望する場合、その可否を判断するプロセスが「就業判定」です。これは単なる主治医の診断書だけでは不十分で、企業側としても適切な判断が求められます。その中心的な役割を担うのが産業医であり、労働者の健康と職場の安全を両立させるための重要な判断を行います。今回は、産業医の立場から「就業判定」とは何か、その基準や実務におけるポイントを詳しく解説します。

就業判定の定義と目的

就業判定とは、病気やけがで休職していた従業員が、職場に復帰することが可能かどうかを総合的に判断するプロセスです。単なる体調の回復だけでなく、職務遂行能力、通勤可能性、勤務時間への適応など、さまざまな要素を考慮する必要があります。そのため、職場環境や業務内容を熟知している産業医が、その判断を行うことが望ましいとされています。産業医は第三者的立場から公正な判断を下し、労働者と企業双方のリスクを最小限に抑えることが求められます。

就業判定が必要とされる主なケース

就業判定は、以下のようなケースで特に必要とされます。

  • 長期間の休職からの復帰(特にメンタルヘルスによるもの)
  • 労働災害後の職場復帰
  • 病気治療後で体調に不安が残る場合
  • 業務に支障が出る可能性のある障害や持病を抱える従業員

これらのケースでは、復帰後に業務が遂行できるか、再発のリスクがないかといった点を慎重に評価する必要があり、産業医の専門的見地が欠かせません。

産業医による就業判定の流れ

就業判定のプロセスは、一般的に以下のような流れで進みます。

  1. 主治医からの復職可の診断書提出
  2. 産業医との面談実施
  3. 業務内容・勤務条件の確認
  4. 本人の体調や勤務意欲の把握
  5. 必要に応じて勤務制限や段階的復帰の提案

面談では、通勤に耐えられるか、集中力や対人関係に問題はないか、睡眠・食事のリズムが整っているかなど、具体的かつ実務的な視点から判断されます。

就業判定の判断基準とは

産業医が就業判定を行う際の判断基準には以下のような要素があります。

  • 主治医の診断と本人の訴えに矛盾がないか
  • 業務に必要な身体的・精神的機能が回復しているか
  • 職場復帰に伴うストレス耐性があるか
  • 再発リスクが低いと判断できるか
  • 復職後に職場で必要な配慮が可能か

特にメンタルヘルスの場合は、客観的な数値で状態を測れないため、より慎重な判断が求められます。

企業と産業医の連携の重要性

就業判定は産業医単独で完結するものではなく、企業との連携が非常に重要です。人事労務担当者と情報を共有し、復職支援計画(リワークプログラム)の策定や、勤務時間・業務内容の調整を検討する必要があります。また、本人の了解を得た上で、職場内の理解や配慮も促すことが、スムーズな復職と定着につながります。社労士や外部支援機関との連携も有効です。

産業医の法的責任と就業判定の限界

就業判定における産業医の役割は法的に明確ではない部分もありますが、労働安全衛生法に基づく「労働者の健康管理」義務の一環とされます。ただし、最終的な雇用・復職の決定権は会社にあります。したがって、産業医の意見を無視して復職を強行し、再発や事故が起きた場合、企業が安全配慮義務違反を問われる可能性もあるため、産業医の判断を尊重することが望ましいとされています。

まとめ:就業判定は復職成功の鍵

就業判定は、復職する本人の健康と職場全体の安全を守るための重要なプロセスです。産業医は、専門的な視点から公正に判断し、企業との連携を通じて無理のない職場復帰を支援します。特にメンタルヘルス関連の復職では、慎重な対応が求められるため、企業は就業判定の体制を整え、必要に応じて社労士などの助言も活用することが推奨されます。復職に不安がある場合は、早めに産業医や関係部署へ相談することが、円滑な復帰への第一歩です。