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精神科産業医が解説:メンタル不調(一次予防・二次予防・三次予防の考え方)

現代の職場では、メンタル不調が生産性や人材定着率に大きな影響を与えています。ストレスや過重労働、対人関係の悩みなどが原因となり、うつ病や不安障害といった精神的な疾患へ発展するケースも少なくありません。そこで重要になるのが「一次予防・二次予防・三次予防」という段階的な取り組みです。本記事では、産業医の立場から、それぞれの予防の考え方と実践のポイントを解説します。

一次予防:メンタル不調を未然に防ぐ取り組み

一次予防は「不調を発症させないこと」を目的とした取り組みです。例えば、職場環境の改善や労働時間の適正化、ハラスメント防止策の徹底などが挙げられます。また、ストレスチェック制度の活用や、メンタルヘルスに関する研修を行うことで、従業員自身がセルフケアの意識を高められるようにすることも効果的です。産業医は、こうした職場全体のリスクを評価し、組織的な健康管理体制の構築を支援します。未然の対策は、組織の健全な発展に直結する重要なポイントです。

二次予防:早期発見と早期対応による被害の最小化

二次予防は「不調の兆しをいち早く見つけ、対応すること」に重点を置きます。例えば、上司や同僚が部下の変化に気づけるように教育することや、相談窓口を設置して利用しやすい雰囲気を作ることが有効です。産業医は、ストレス反応や睡眠障害など、初期段階での小さなサインを見逃さないことが求められます。さらに、本人との面談を通じて就労の継続が可能かどうかを判断し、必要に応じて勤務内容や時間の調整を提案します。早期の介入が、長期休職や重度化を防ぐ大きな鍵となります。

三次予防:再発防止と復職支援の取り組み

三次予防は「不調から回復した従業員の再発防止や復職支援」を目的としています。休職後の復職プロセスでは、段階的に業務へ戻れるように勤務内容を調整したり、上司や同僚の理解を深める取り組みが欠かせません。産業医は、主治医や人事部と連携しながら復職可否を判断し、円滑な復帰をサポートします。また、復職後も定期的にフォロー面談を行うことで、再発リスクを低減させることが可能です。組織としても、復職者が安心して働ける職場づくりを継続することが求められます。

まとめ:段階的予防で守る職場の健康

メンタル不調の予防は、「一次」「二次」「三次」のそれぞれの段階で適切に取り組むことが不可欠です。一次予防で環境を整え、二次予防で兆しを見逃さず、三次予防で復職と再発防止を支えることが、職場全体の健全性につながります。産業医はそのプロセスを専門的に支援する役割を担っており、企業にとって大切なパートナーとなります。もし自社で従業員のメンタル不調に課題を感じる場合は、産業医と連携し、段階的な予防策を整えていくことを強くおすすめします。