前回に引き続き、パワハラにまつわる話です。
でも今回は、「過剰なパワハラ被害の振りかざし」の話
ご相談風、架空症例:
「ごく普通に仕事の指示を出しただけなのに、新人の部下がすぐに『それってパワハラです!』と言ってくるんです。
納期の確認や注意といった、ごく一般的な指導でも同じ反応を繰り返されるので、正直こちらも萎縮してしまいます。
周りの社員も腫れもの扱いで指示を出しにくくなり、業務全体が回らなくなってきているんです。」
こんな状況を耳にして、
部下の指導方法に悩んでしまう上司の方は少なくないだろうと思います。
悩むことは間違っていません。
ただ、この部下の発言は許容されるべきではない。
まず先に指導して修正されるべき言動です。
パワハラの定義
パワハラとは、
厚生労働省の定義によれば、
「職場におけるパワーハラスメントは、
職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの要素を全て満たすもの」
です。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf
パワハラの6類型とされる、
(1)身体的な攻撃
(2)精神的な攻撃
(3)人間関係からの切り離し
(4)過大な要求
(5)過小な要求
(6)個の侵害
などは論外です。それは当たり前。そんな話はしません。
そんなことは全くない状況で、パワハラ被害を振りかざす者にどうするか。
そんな話です。
私がパワハラだと思えばパワハラだ!
例文の若者のようにパワハラ被害を振りかざす者は
しばしば「受けた本人がパワハラであると受け取ればパワハラになる」
などと主張しますが、
全く間違いです。
③労働者の就業環境が害される
ような言動でなければパワハラには当たりません。
同じく前記の厚労省文書から、
「『労働者の就業環境が害される』とは、
当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、
労働者の就業環境が不快なものとなったため、
能力の発揮に重大な悪影響が生じる等
当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。」
つまり、主観的な苦痛のみでは
パワハラであるとする理由にはなりません。
そして、
「失敗を指導された、叱られたらへこむ」
これは人間として当然の感情の動きであって、
一律に重大な悪影響になるとしたら、
それは受け取り側の問題です。
指導はしないとパワハラ
必要な指導はしなくてはなりません。
なぜなら、それが上司の職務だからです。
そして、業務指導をせずに放置した場合、
パワハラの6類型における、
「過小な要求」や「精神的な攻撃」にあたってしまうかもしれません。
「そんな勝手な話があるか!」って?
私もそう思います。
だから、何がパワハラに当たるのか、当たらないのか
それをはっきりさせないと職場のモラルは崩壊します。
どこがストライクで、どこからがボールなのか。
それがわからなかったら野球にならん、
というところでしょうか。
過剰なパワハラ被害の振りかざし
パワハラではないことをパワハラであると騒ぐ。
これは、会社の通常の業務運営に差し障る行為です。
パワハラは企業内の大事故です。
パワハラ対応には、
調査をし、責任を追及し、再発防止するために、
時間も人手もコストもかかります。
どんな会社の就業規則にも
「会社の業務運営を妨げちゃダメ」
という一文は入っているはずです。
もし不必要なパワハラ対応を乱発させたら。
それはもはや業務妨害。懲罰の対象ともなるでしょう。
そんな不幸な事態を避けるためには、
安易に「それはパワハラだ!」と言い出す者には、
きっちりと指導をする必要があるのだと思います。
何がパワハラであるのか、という定義に始まり、
パワハラが認定されたときにどのように会社として対応がされるのか。
そして、パワハラには当たらないことを、
パワハラであると騒ぐことがどう扱われるのか。
まず、「オオカミ少年」の話を読んでもらいましょうかね。
パワハラは上司がするもの!?
「パワハラは上司がするもの。部下はパワハラ加害者にはならない」
そんなこともありません。
「職場における優越的な関係を背景とした言動」
であって、
部下であり、守られる立場である、
指導を受ける立場である、
という弱者性は
裏返しにすれば、
「できなくても守られる」という優越性です。
「無敵の人」というやつにも通じるものがありますね。
「過剰なパワハラ被害の振りかざし」はパワハラです。
でも、パワハラ加害者によくあるように
「自分はパワハラなどしていない」と確信している
逆に言えば、
そう確信することがパワハラの第一歩なわけだけども。
なんでパワハラはいかんのか。
これは前回のお題でした。
パワハラは職場の人間関係、協力関係の破壊であり、
職場の安全性、創造性を損ない、
職場の生産性を損なうからでした。
典型的なパワハラ加害者にあるのは、
「わかってくれるはず」という甘えです。
それが、
「部下なんだからこれくらい大目に見てもらえるはず」であったり、
「言い張っても相手は傷つかないはず」
「会社の人間関係を保つ責任は自分にはないはず」
という部下の立場からの甘えであっても、
同じことです。
で、どうしたら良いのやら
そんな人間関係の破壊を起こさないためには。
自分が十分に礼節を尽くさなくても相手が分かってくれる。
俺とお前なら分かるはず、といった甘えを捨てること。
以心伝心。そんなものはなく、
「常に批判にさらされるかもしれない」
という「万人の万人に対する闘争」の状態にあることが自然だと思うこと。
…
だとちょっと世紀末になってしまうから、
接する人全てに親切にはできなくとも、
礼節をもって接しなくてはならない。
そういった油断しない、甘えすぎない状態、
それこそがハラスメントの少ない世界につながっていくのでしょう。
おまけ
「残業キャンセル界隈」なるパワーワードはもうこのパワハラまっしぐらですよね。
「残業キャンセル界隈」名乗る若者が増加中…… 上司はどう向き合うべき?SNS発の「○○キャンセル界隈」が職場にも広がり、「残業キャンセル界隈」を名乗る若手が増えている。背景には働き方改革の誤解www.itmedia.co.jp
