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精神科産業医なんて、という声に 産業医に求めるもの その1

先日の精神科産業医協会の会合で聞いた、ちとつらい話。

常勤産業医がいる規模の会社で、
精神科を専門とする非常勤産業医として契約されていたが、
常勤の産業医が対応できるから、と
「メンタルはこっちでできますから」
と言われて契約を切られてしまった、残念だ、
という話。

そうなってしまう理由はいくつか考えられる。

一つは、
普通の産業医の提供できるメンタル対応のレベルが向上し、
企業としてはもう十分、
格別にコストをかける必要もないか、
という場合。

もう一つは
企業の求めるメンタル対応の水準と、
その精神科産業医の提供する対応の成果のミスマッチ
どっちかが高すぎて、どっちかが低すぎて。

企業側の言い分


企業側の求める対応の水準が低くて、
普通の産業医でも十分だった場合、
または企業側の見る目がなくて十分だと思ってしまっていた場合、

まあそういった企業とはご縁がなかったということで、
それはそれで良かったのかもしれない。

本当に普通の産業医のメンタル対応能力が伸びてきて、
(よい産業医が来て)
企業の求める水準とマッチした、
ということなのかもしれない。
結局のところ、
企業はメンタル対応の専門家であることまでは求めていなかった。
ということもアリエル。

自分が産業医になった10年前、
当時の師匠は「産業医の仕事の7割はメンタル対応」と言っていた。
後の部分は、
企業の安全管理の力がついてくることにより、
産業医はチェックして承認することが役目になりつつある、と。
あれから10年。
その見方は定着しつつあるように思うが、
世の中もそれに対応できる産業医が主流になってきているだろう。

まだ「メンタル対応は苦手だ」というベテランの嘱託産業医はいても、
この10年は
「メンタル対応は嫌だ」と思っているのに産業医になってしまうなんて
うっかりさんはもういないだろう。

臨床研修で鍛えられた若者たちは小さくまとまってはいても、
器用に何でもこなせることが多いので、
全くできないが故に自分はできていると思うダニングクルーガー氏は、
それほどいない。


精神科産業医に非があるとしたら、
自分の実力、必要性をアピールできなかったことなのかも。
でもそれはその実力を発揮する機会がなかった、
平和な良い会社だった、
ということでもあるだろうから、
結局、その環境にはオーバースペックだということかもしれない。
ちと精神科医に甘いかな?

精神科医だから、が理由の時


でも、とても残念ながら、
その精神科産業医が大した価値を提供できていない、
ということもあるかもしれない。
実際に薬物療法とお説教しかできないような精神科医だったら、
産業臨床の場面ではそのダメさ加減が際立ってしまうだろう。

かつて僕が聞いた、
「精神科医の産業医なんて、御託並べてるだけで全く役に立たない」
といった評価の噂や、
世の精神科医を見るに、
そんな評価が妥当であることも少なくないのだろう。

でもなあ、
そんな精神科医もいるだろうけれど、
この場合は精神科産業医協会に名を連ねる水準の産業医だから、
そんなにレベルが低くはないと思うんだよなぁ。



実際のところ、
なんでそんな事態がおこっているのか、
本当にそんな流れがあるのか、
については時の試練を経てみないとわからないけれど、

精神科産業医という存在であること、
についてはもうちょっと続けます。