おおた産業メンタルラボ

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始 精神科医だから、って相談された話

一見の人から電話で相談を受けた。
友人伝いにイベントで30分ほどご一緒しただけのごく薄い関係の方。
そんな時に25年目の精神科医がどう対応したのか。
そんな話。

相談内容

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西日本にある実家に住む、50代後半のお母様のこと。
旦那さんと二人暮らしだが、
旦那さんは本人の状態があまりにひどく、一緒にいられず、
隣県にある自分の会社へ行ってしまい、現在は別居状態だという。
10年来の”うつ”が悪化しており、「全く一睡もできていない」と訴えている。
一方で、朝になると薬が残っていることもあり、起きられない。
起きてもぼうっとしている状態が続いている。

”うつ”になった”原因”はいくつもある。
かつて自分で事業をしていたが、その際の仕事上のパートナーに裏切られた経験が”トラウマ”になっている。
また、結婚当初の旦那さんの行動についても”トラウマ”があり、そのことをいまだに許せずにいる。

「一睡もできない状態が続き、”うつ”がひどい」ため、A総合病院に入院した。
しかし、入院中もやはり眠れない状態が続き、
1か月ほどで「もう家に帰りましょう」という判断になり、自宅に戻った。
だが、帰宅後も症状は全く良くなっていない。

ご子息である相談者のもとに、そんなお母様から電話がかかってきて、
「つらい」「苦しい」と繰り返し訴えられる。
相談者は「一体、自分はどうしたらいいのだろう」と困り、考えあぐねているという。
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(この事例はファンタジーです)

相談者は、
何でもそのイベントの時に、
私が「薬をあまり使わない医者」「そういう精神科医だ」
と友人から紹介されたとのことで、相談してみたいと思ったらしい。
誰か良いカウンセリング先というか、
そういった知り合いが実家の近くにいないか。
そんなことを期待して相談してきた、ということだった。

<ないんだな、これが>で終了でもいいような気もするけれど、まあ、なんというか、友人の顔も立てなきゃいけないので、しゃあない。もう少し話を聞く。

電話相談での限界と危険性の共有。限界設定


→まずお伝えしたいのは、
これから私が話すことは、あなたにとって心地よくないかもしれない、
傷つくことになるかもしれない、ということです。

→精神科医だから優しくしてもらえるだろう、
癒してもらえるだろう、と期待される方が割といらっしゃるけれども、
そんなことはありません。

医師の面接は医療です。
治療して良くするためには、つらいことや苦しいこともある。

場合によっては、健康なお腹の表面を切って血を見るような手術をすることもある。
それが医者というものです。

→たとえ精神科であっても、
苦痛を伴うことがあっても、最終的に本人のためになることを考える。
それが医療です。

→もちろん、あなたを傷つけたいわけではないし、
苦しめたいわけでもありません。
ただ、そうなってしまう可能性がある、ということです。

→そして、これは電話での相談です。
目の前にいないから、
今ここで止めた方がいい、というサインに私が気づけないかもしれない。

対面であれば、表情や反応を見て止めることもできるけれど、
この電話ではそれができない可能性があります。

→だから、どうか「ちょっと止めてほしい」
「苦しい」「それは嫌だ」と思ったら、遠慮なく言ってください。
もちろん、傷つけないように気をつけながら話しますが、
そう感じられる場面があったら、必ず止めてほしい。

→場合によっては、
「こんな話をしなきゃよかった」「このクソ医者」と思われることもあるかもしれません。
ご満足いただけないことがあったとしたら、
それは私の力不足でもあるので、仕方ないと思っています。

→それでも、あなたが傷つくことだけは避けたい。
だから、つらくなってきたらストップ。
それをお願いします。

まずは、こんな断りを入れておく。
だって、ほとんど接点のない私に相談してくるような人で、
精神科医に対してどんなファンタジーを持っているのか、
計りようもない。

自分が嫌われるのは仕方ないけれど、
相手を傷つけてしまうこと、
紹介してきた友人の顔に泥を塗るようなことだけは避けたい。

とすれば、まずは防御姿勢から。

相談目的の確認


→何から話を始めましょうか。
まず、あなたが今回相談してくださった目的は何ですか。
どうなったらいいなと思って、今回相談されていますか。

>いや、なんか精神科の先生と相談できる機会ってないんで。
>そういうチャンスもないし、薬をあまり使わない精神科の先生だって聞いたから。
>この状況ってどうなのかと、
>それで、実家の近くでそういったカウンセリング先とか、知り合いがいないかと思って。

(そんなものはない、で終わりにしてもいいんだけれど、友人の顔も立てなきゃいけないので、もう少しだけ相手をする)

→なるほど。
では、あなたとしては、この状況に困っていらっしゃる、ということですね。
伺う限りでは、お母様からの電話があれこれかかってきて、
それに対して、どう対応したらいいか、
そういうことを相談したい、
という理解でいいですか。

→ただし、私は今、診察をしているわけではありません。
さらに、目の前でご本人の話を聞いているわけでもないので、
どんな様子なのかも分かりません。

→だから、ここで話すことは、
テレビの評論家よりも、さらに適当なことを言っているようなものです。
そういう枠組みでの話だ、ということは理解しておいてください。

続きます。