一見の人から電話で相談を受けた話の4回目
相談内容
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西日本にある実家に住む、50代後半のお母様のこと。
旦那さんと二人暮らしだが、
旦那さんは本人の状態があまりにひどく、一緒にいられず、
隣県にある自分の会社へ行ってしまい、現在は別居状態だという。
10年来の”うつ”が悪化しており、「全く一睡もできていない」と訴えている。
一方で、朝になると薬が残っていることもあり、起きられない。
起きてもぼうっとしている状態が続いている。
”うつ”になった”原因”はいくつもある。
かつて自分で事業をしていたが、その際の仕事上のパートナーに裏切られた経験が”トラウマ”になっている。
また、結婚当初の旦那さんの行動についても”トラウマ”があり、そのことをいまだに許せずにいる。
「一睡もできない状態が続き、”うつ”がひどい」ため、A総合病院に入院した。
しかし、入院中もやはり眠れない状態が続き、
1か月ほどで「もう家に帰りましょう」という判断になり、自宅に戻った。
だが、帰宅後も症状は全く良くなっていない。
ご子息である相談者のもとに、そんなお母様から電話がかかってきて、
「つらい」「苦しい」と繰り返し訴えられる。
相談者は「一体、自分はどうしたらいいのだろう」と困り、考えあぐねているという。
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(この事例はファンタジーです)
もし診察に同席できたら
→薬が朝まで残ってボーッとしている、
というのは確かに薬のネガティブな作用ではあるけれど、
薬の量や選び方については周りがどうこう言えるものではない。
それは主治医が、お母様との診察の中でどう判断するか次第。
だけれど、
もしご実家の方に戻られて、一緒に受診されるチャンスがあるとしたら、
受診に同伴してみても良いと思う。
その時に、「お母様は私には『全く眠れない、眠れない』と言う一方で、昼間に薬が残ってボーッとしているとも言うんです」と主治医に伝えてみる。
それは良いかもしれない。
→お母様は「眠れない、眠れない」ということしか、主治医には伝えていない可能性がある。
主治医も、入院を通してお母様の状況は把握しているけれど、どこまで踏み込むべきか悩んでいて、何かのきっかけを待っている可能性もあると思う。
ご子息がそこに関わることで、変化のきっかけになることもあり得る。
遠隔の地でできること
→でも大切なのは、お母様が「薬が合っていない」と自分で言っていること。
お母様は今、それが言いたくてしょうがない。
薬のせいにしたい。病気のせいにしたい。
そんな時期なんです。
→そして、周囲の人間としては、
特に距離の離れたところに住んでいる存在としては、
「そんな時期なんだな」「また変わるんだろうな」と思って見守っていくこと。
間違ってもそれを、
「病気だから治療しなくちゃいけない」と捉えたり、
本人のあいまいで、でもネガティブな方向に向かおうとする言動を真に受けたりしないこと。
そして、それを「そうじゃないよ」などと否定して説得しようともしないこと。
おかしな方向に行っているときは、それを応援してはいけないし、
反論しても意固地になって、そこにしがみつくもの。
特にお母様のようにエネルギー水準の高い方は、なおさらです。
だから、周りの力で本人をどうにかしようとすることは避けなくてはならない。
結局のところ、
お母様ご自身が気づいて、自分で方向転換していくよりほかない課題です。
娘さんであるあなたが、「きっと変わる日が来る」と見守っていく姿勢が、
お母様の気づきを生むことに役立ちます。
大切なことは、お母様のネガティブな方に向かうエネルギーを助けないこと。
それだけです。
→ご期待に添えているかどうかわかりませんが、
本人以外の外野が何かできることがあるとしたら、その程度です。
そして、精神科医であったとしても、
申し上げられるのはこれくらいです。
医者なら何か特別なことができる、というわけではありません。
直接受診したら良いかというと
>やっぱりそうなんですね。私もそんなふうにも思いながらも、
>精神科の人にこうやって相談する機会はなくってー
>本人も調子のいい時は「あなたの近くに行こうかな」なんて言うんです
>もし来ることになったら、先生のところに受診させてもいいですか。
→ご本人が希望されるのであれば、どうぞ。
予約にはなりますが、それを待っていただけるのであれば、通常どおり診察させていただきます。
ただ、私は今回と同じような説明をするだろうと思います。
それは、お母様のお気には召さないかもしれません。
「私が悪いって言うの?」
「あんたみたいなへっぽこ医者に何がわかるっていうの。自分が治せないのを棚に上げて!」
などと怒られてしまう可能性も、少なくありません。
まあ、それがお母様が元気になることにつながるなら、医者としてはまったくかまいませんが、
お互い疲れますし、きっとお母様のお気に召さない可能性が高いと思います。
直接受診に来るのは、やめておいた方がお互いのために良いのではないかと思います。
さて、今日は時間も過ぎましたし、このくらいで。
また何か改めて相談したいことが浮かんでくるようであれば、ご連絡ください。
直接は言わないこと
私の評価
このお母様はきっと、とてもエネルギー水準の高い方。
ただ、今はその高いエネルギーが
「私ってうつなの!」「苦しいの!」に向いてしまっている。
そういうことなのだろうなぁ。
ファンタジーの共有
相談者は「精神科医なら何とかできるのでは」というファンタジーを語る。これもまた、おそらく本心ではそんなことは思っていない。
一般の方は、そこまで夢見がちではない。
多分それは、相談される医者の側が持っている、
「そのように思っていてほしい、頼りにしていてほしい」
というファンタジー。
一般の方は、ほぼ無意識に、
医者のようなお人よしを操作するため、
その専門家の時間を自分のために使うために、
そうした文脈を利用している。
率直なところ、
私にはそういったファンタジーも、操作しようとされることも、あまり気持ちよいものではない。
ただ、そうやってお互いのキャラ設定、場面設定に則りながら、
「リアルワールド」というコントは作られていくのだろう。
まあ、「水と空気と相談はタダだと思われている」、
そんな空気からファンタジーを紡ぐ話でした。
この項ここまで。
