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地方企業こそ知っておきたい両立支援―「治療しながら働く」が当たり前になる時代と産業医の使い方

2026年、企業に求められる「治療と仕事の両立支援」


2026年4月に向けて、
「治療と仕事の両立支援」は、これまで以上に企業が向き合うべきテーマになってきました。

これまではガイドラインとして扱われてきた内容が、
より制度的な位置づけを持つ方向で整理されつつあり、
経営者にとっても「知っているかどうか」で差が出る分野になっています。

とはいえ、地方の中小企業の経営者の方と話していると、
こんな反応は少なくありません。

「産業医って大企業の話でしょう」
「うちは50人いないから関係ないのでは」
「病気になったら休ませれば十分では」

精神科医として企業の産業医をしていると、
こうした誤解には本当によく出会います。

でも実際には、
治療と仕事の両立は、企業規模にかかわらず起きる問題です。

むしろ人手に余裕のない中小企業ほど、
社員が治療を続けながら働ける仕組みを持っているかどうかで、
経営への影響が大きく変わります。

両立支援について


両立支援とは何か。

ひと言でいえば、
病気になった社員が、
必要な治療を受けながら仕事を続けられるようにすることです。

言い換えると、
「病気になったら辞める」ではなく、
「病気になっても働き続けられる余地をつくる」ための仕組みです。

この考え方が必要になっている理由は単純です。
がん、糖尿病、心疾患、脳卒中、難病、
そしてメンタルヘルス不調まで含めて、
治療を続けながら働く人が、いまの職場では珍しくなくなったからです。

かつてのように
「病気になったら休職か退職」
という一本線の発想では、
現実に合わなくなっています。

外来でも、
うつ病や不安障害の患者さんが
「完全に治るまで仕事をやめる」のではなく、
働き方を調整しながら治療を続ける場面は確実に増えています。

両立支援の対象は思っているより広い


経営者として押さえておきたい点は、そんなに多くありません。

まず大事なのは、
この問題は正社員だけのものではないということです。

パート、アルバイト、契約社員などを含め、
雇用形態にかかわらず、
治療と仕事の両立が必要になる場面は起こります。

次に、
対象となる病気はかなり広いということです。

がんのようにイメージしやすい病気だけではありません。
糖尿病や心疾患のような慢性疾患もそうですし、
メンタルヘルス不調も当然含まれます。

要するに、
継続的な治療が必要で、
働き方に何らかの配慮が必要になるなら、
両立支援の対象として考える必要があります。

産業医は「医療と職場の通訳役」


そして、ここで重要になるのが産業医です。

両立支援では、
主治医、会社、本人の三者が関わります。

ただ、主治医は職場の実態を詳しく知っているわけではありません。

たとえば診断書に
「軽作業なら可能」
と書かれていても、
その職場での軽作業が何を指すのかは別問題です。

立ち仕事はどうか。
重量物はどうか。
運転業務はどうか。
夜勤はどうか。

このすり合わせがないと、
診断書はあっても現場は動きません。

そこをつなぐのが産業医です。

医学的な判断と、
職場の実情の両方を見ながら、
本人にとって無理がなく、
会社としても現実的な落としどころを探る。

産業医は、
医療と会社の通訳役だと考えると分かりやすいです。

50人未満の会社でも相談できる


中小企業では、ここでよく三つの誤解が起きます。

一つ目は、
「50人未満だから関係ない」
というものです。

たしかに、
労働安全衛生法上の産業医選任義務は、
常時50人以上の労働者を使用する事業場にかかります。

でも、
社員が病気になるかどうかは、
会社の規模では決まりません。

10人の会社でも起きますし、
100人の会社でも起きます。

しかも小さい会社ほど、
一人抜けたときの影響は大きい。

だから実務としては、
小規模企業ほど両立支援を知っておく意味があります。

診断書だけでは職場は動かない


二つ目は、
「主治医の診断書があれば十分」
という誤解です。

主治医からの診断書は大事です。
ただ、それだけで職場運用まで決まるわけではありません。

就業制限をどうするか。
残業はどうするか。
運転は可能か。
現場配置を変えるか。

ここは会社側の判断と、
産業保健の視点が必要になります。

小規模企業の相談先「地域産業保健センター」

三つ目は、
「うちは産業医に相談できない」
という思い込みです。

ここは地方企業ほど知っておいてほしいところで、
実は相談先があります。

地域産業保健センターです。

地域産業保健センターは、
50人未満の小規模事業場を支援する仕組みです。

医師による面接指導の相談、
健康相談、
メンタルヘルスに関する相談、
個別訪問による助言など、
産業保健サービスを無料で利用できます。

小規模事業場にとって、
「まずどこに相談したらいいか分からない」
という壁は大きいのですが、
その入口としてかなり使いやすい制度です。

実際、
地方企業の支援では
「まず地域産業保健センターにつなぐ」
だけで前に進むことが少なくありません。

両立支援は「仕組み」があれば難しくない


両立支援の進め方自体は、
本来それほど複雑ではありません。

会社としての基本方針を決める。
相談窓口を決める。
必要に応じて産業医や支援機関とつながる。
本人の同意のもとで主治医の意見を確認する。
そのうえで就業上の配慮を決める。

流れにすると、それだけです。

難しいのは制度そのものではなく、
仕組みがないまま個別対応しようとすることです。

場当たり的に動くと、
本人も上司も人事も困ります。

中小企業には「顔の見える職場」という強みがある


中小企業には、この点でむしろ強みがあります。

社員の顔が見えることです。

大企業では、
人事は本社、現場は別拠点、
上司も異動が多く、
誰がどんな体調変化を抱えているのか見えにくいことがあります。

その点、中小企業は距離が近い。

社長や管理職が、
「最近ちょっと無理をしていそうだ」
という変化に気づきやすい。

これは産業保健の世界では、
かなり大きな強みです。

両立支援はコストではなく経営戦略


病気をゼロにすることはできません。
でも、
病気を抱えた人を支えやすい職場はつくれます。

両立支援は、
コストとして語られがちです。

けれど実際には、
離職防止、
採用コストの抑制、
職場の信頼感の向上、
生産性の維持、
労務リスクの低減など、
会社側のメリットもかなり大きいです。

特に地方では、人材の代替が簡単ではありません。

そう考えると、
「辞めさせない仕組み」を持つことは、
福祉的な配慮というだけでなく、
経営そのものの問題でもあります。

病気になっても働き続けられる会社へ


社員は、いつか病気になります。
これは避けられません。

だから企業に必要なのは、
病気にならない会社を目指すことだけではなく、
病気になっても働き続けられる会社であることです。

診療をしていても、
「この会社なら戻れそうだ」
と思える患者さんは、
やはり回復の進み方が違います。

中小企業には、
顔の見える距離感があります。

それは、
両立支援において大きな武器になります。

まずは自社のなかで
「病気になった社員が出たとき、誰が受けるのか」
を決めること。

そして必要があれば、
地域産業保健センターに相談すること。

その一歩だけでも、
現場の混乱はかなり減らせます。

企業の両立支援は、専門家に相談できます


両立支援の仕組みは、会社だけで抱え込む必要はありません。
産業医や産業保健の専門家に相談することで、
主治医の意見と職場の実情をすり合わせながら、
現実的な対応を検討することができます。

また、常時50人未満の事業場であれば、
地域産業保健センターを通じて無料で相談できる制度もあります。

「社員が病気になったとき、どう対応すればよいのか分からない」
そんなときに、専門家とつながっているだけでも、
現場の判断はかなり楽になります。

両立支援は、特別な会社だけが取り組むものではありません。
社員が安心して働き続けられる環境をつくるために、
必要なときに専門家の力を借りることも、一つの現実的な選択です。

アンドモアー


地産保って、郡市医師会とかと併設されているところも多いけど、
結局のところ開業医の集合体だから、
産業医としての相談力に必ずしも余裕があるわけではなかったりする。

50人未満の小規模事業所でもストレスチェックが義務化される方針となったことも含め、
おそらくここを強化していく流れが作られていくのだろう。

今の産業医業界は産業医大勢が一大勢力であることは間違いない。
そしてやはり産業医大勢は、大企業の専属産業医こそ王道!ってなっている感は否めない。
まあ否定はしないけれども。

そうすると、この中小企業を支える地産保の活動力はどうやって担保していくのか?
地域医師枠の活動の中に位置づけられていったりするのだろうか?
まあそんな地域の産業への貢献とか、全体のことを考えられるような、
そんなイケてる社会の仕組みだったり行政であれば、
こんな先行き不明な世の中にはなっていない気もするけれど。