従業員本人から「産業医と二人で相談したい」と希望されることがあります。
その場合でも、1対1での面接にはしない方が良いこともあります。
産業医が本人と1対1で会うことがアリなのは、
本人が会社に関係のないプライベートなことを相談したい場合です。
そういう人は多くはありませんし、そもそも会社でその相談をすることが適切なのか、ということが話題になります。
もう一つは、本人が何をどう取り組んだらいいのかわからない時です
この場合は、本人と一緒に課題や困りごとを整理して、取り組む順番や、味方を増やす作戦を考えます。
会社では多くの場合、上司や会社側スタッフを入れて一緒に取り組む、次の面接を準備することになります。
「上司に対応を工夫してほしい」など、本人が会社に何らかの対応や変化を求めている場合、
産業医がそれを聞いても、その機会だけで状況の変化が起きることはありません。
産業医が本人の希望をもっともだと思った場合、本人と会社側スタッフを入れてまた面接の機会を持つことになります。
本人の事を扱う時に、本人が不在の場面を作ることはありません。
産業医が本人の味方になって、本人不在のまま代理人となってしまうようなことは避けなくてはいけません。
臨床医でもある産業医がついついやってしまいがちなミスです。
会社での第三者としての産業医の立ち位置と、本人の味方である主治医との役割の違いにつながる話です。
本人から会社への希望があり、そのことがもっともな希望であった場合、
その希望は本人から会社に伝えてもらわなくてはいけません。
産業医はその隣で賛成したり、同意を示したり、本人を励ましたりすることはあっても、
本人に立ち替わって本人の代理人になってしまわないようにするべきです。
病院での主治医は弱った本人の代理人のようにしなくてはいけないこともあります。
しかし会社での従業員本人は、弱った病者ではありません。
自分で自分の希望を語る力を持った会社への参加者です。
産業医は本人の隣でその希望の実現をお手伝いすることはあっても、代わりに希望を言ってしまうようなことは避けるべきです。
それが産業医が従業員の味方になるやり方です。
逆に言うと、
「私の不在のところで私の処遇を不利に扱っている」
「産業医は本当は私の味方ではないのではないか」
と本人が疑念を持つような場面は作ってはいけません。
上手くまとまりませんが、そんなことを考えながら、日々産業医面接に臨んでいるよ、という話でした。
この項ここまで。