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必要不可欠な精神科領域の薬の欠品で思うこと

しばらく前から、新型コロナ騒動やら、ウクライナ戦争やら、後発品製造業者の問題やらの影響で、古くて有用な薬が供給不安定になっている。
 
思いつくままにあげると
抗精神病薬 クロルプロマジン(商品名コントミン、ウィンタミン)
抗うつ薬 アモキサピン(アモキサン)、マプロチリン(ルジオミール)、ノルトリプチリン(ノリトレン)
抗てんかん薬 バルプロ酸(デパケン)
抗パーキンソン病薬 ビペリデン(アキネトン、タスモリン)、トリヘキシフェニジル(アーテン)
抗ヒスタミン薬 プロメタジン(ピレチア、ヒベルナ)
などなど
 
「供給不安定」ならなんとか使えるかのように聞こえるが、実情は薬局に入荷せず「売り切れ」なので、処方できない。
処方箋を書くことはできなくないが、肝心の薬局に物がないのでダメ。
なかには代謝物に発がん性が見つかり、もう二度と使えないであろう薬もある。
もはや諦めるしかない。
 
これまでの処方が継続困難になってしまい、処方を変更しなくてはならないことで、
これまで状態が安定していた患者さんが、病状が悪化してしまったり、副作用が出てしまったりする。
目に見えにくいところでは、これまでならうまく治療できていたであろう人が、そのあてにしていた薬がないことで治療がうまくいかないことも時々ある。
 
 

発売されて5年とかの新しい薬なら、「大問題があるので今日からもう使えません」となってもたいして慌てないとは思うが、
供給不安定なのは、どれも20年、30年と使われてきた、使用経験と効果の実証がされてきた薬ばかりであるのが、とてもタチが悪い。
効かなくて使われなくないような薬はもうふるいにかけられた後に残った有用な薬ばかりだから。
 
これらが起きた要因であるサプライチェーンの問題とはすなわちグローバライゼーションの負の側面。
「国が何とかしろ!」と精神医療業界のエライ人がお気持ちを語っていたが、何にもならず。
ポジショントークなのかもしれないとは思うけど。
 
日本の人口減や経済力の低下でいろいろが不自由になっていくのだろうとは思っていたけれど、
お金がないのとは別の要因で、これまで蓄積されてきた医療の手法が利用できなくなるとは思わなかった。
蓄積が通用しないのだから、変化というよりは後退なのだと思う。
 
古くても必要な薬はある、と思う中年精神科医のひとりごとでした。