精神科用語のようでいて、実は精神科医がほとんど使わない言葉。
今回はそんな「自律神経失調症」について書いてみます。
詳しくは下記の「正しい説明」を参照していただいて、
簡単に言うと「自律神経失調症」とは、
「生活習慣の乱れや心理的ストレスの過多によって起きる、身体の自動的な調節能力のバランスが乱れてしまった状態」のことです。
まあそういう診断名はあります。
でも、はっきり言って、精神科医はほとんど使いません。
精神科医が出会うのは、患者さんから「紹介元のかかりつけの先生にそういわれたんです」という状況ばかりです。
イメージとしては一般の開業医が「あー、自律神経失調症ですねー」と患者さんにとりあえず丸めて伝えるために使っているのでしょうか。
<そういっておけばなんとなく納得するだろう>みたいな。
なぜ精神科医は「自律神経失調症」という言葉を使わないのか。
それは、純粋な「自律神経の失調だけ」の状態というのはほとんどないからです。
絶対的にはあるのでしょうが、正しい説明で対処が「健康的な生活習慣とストレス管理」なんて毒にも薬にもならない結論になっていることでわかる通り、
それは医療の問題ではない(極論)だからです。
そして、患者さんもそれだけのことでわざわざ受診する方は多くないでしょう。
実際のところ、
「自律神経失調症」と言われたり、訴えたりして受診してくる患者さんは、何らかの精神的不調を抱えている方が多い。
もちろん、自律神経失調症状がある方、それが「うつ」などに伴って起きている患者さんはいます。
しかし、実際のところ、「自律神経失調の症状」がない、
そもそもの症状が「自律神経失調の症状」ではない方がほとんどです。
症状としては「不眠」であったり、「不安」「うつ症状」であったりして、
状態像としては、「抑うつ状態」であったり、ときには「精神病状態」であったりします。
「自律神経失調症」という言葉は、前回の「ノイローゼ」や「ノイローゼ気味」と同じように、
精神症状をなんとなくあらわす言葉になってしまっている、というのが実情ではないでしょうか。
問題は、その言葉を発する主体が、「ノイローゼ気味」であれば患者さんの側であったのが、「自律神経失調症」の場合には医師であることです。
誤診というよりは、そこに患者さんをとりあえずあしらっているような不誠実さを感じてしまうのは、私だけなのだろうか?
なので、言葉を大切にしている精神科医は「自律神経失調症」という用語は使いません(極論)。
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正しい説明:自律神経失調症とは
自律神経失調症は、自律神経が正常に機能しないことによって、身体の様々な部分に不調が現れる状態です。
では、自律神経とは何でしょう?
自律神経とは、生物全般に備わる、心臓や消化器官などの自動的な機能を調節する「神経系の働き」です。
「視神経」や「三叉神経」、といった感覚を司るような物理的に存在する神経組織とは異なります。
また、「運動神経」や「反射神経」といった、ある方面の能力を総合的に表すような一般用語とも違います。
おっと脱線。閑話休題。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。
「交感神経」は「戦う・逃げる」モードで働く神経系で、心拍数が上がり、血圧が上がります。
一方、「副交感神経」は「リラックス・休息」モードで働く神経系で、心拍数が下がり、体がリラックスします。
この交感神経と副交感神経のバランスは、その時の状況に応じて自動的に調整されています。
しかしそのバランスの自動調整が崩れ、例えば、めまい、頭痛、動悸、過呼吸、吐き気などの症状が現れることがあります。
これが自律神経失調症です。
自律神経失調症はどんなきっかけで起きるのでしょうか?
ストレス、不規則な生活習慣、運動不足、睡眠不足などが自律神経失調症のきっかけとなると言われています。
対処方法はその逆で、健康な生活習慣やストレス管理、規則正しい食事や十分な睡眠、適度な運動。それらを程よく整えることです。
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今回は、精神科医が使わない言葉「自律神経失調症」についてでした。
この項ここまで。