今回は刺激的だった本の話。
「POSITIVE DEVIANCE(ポジティブデビアンス): 学習する組織に進化する問題解決アプローチ」
POSITIVE DEVIANCE(ポジティブデビアンス): 学習する組織に進化する問題解決アプローチ | リチャード・パスカル, ジェリー・スターニン, モニーク・スターニン, 原田 勉 |本 | 通販 | AmazonAmazonでリチャード・パスカル, ジェリー・スターニン, モニーク・スターニン, 原田 勉のPOSITIVE DEVIamzn.asia
ポジティブデビアンスPDとは耳慣れない言葉ですが、いったい何でしょう?
この本の解説によれば、
「ポジティブデビアンス(PD)とは、同じコミュニティや組織などで、問題が発生している悪条件の現場のなかで良い結果を出している「逸脱者」です。このPDが成果を出したプロセスを問題解決につなげるのがPDアプローチです。」
Chat GPTさんにも訊いてみましょう。
「Positive Deviance(ポジティブ・デビアンス)は、社会学やコミュニティ開発などの分野で使われる概念です。一般的な解決策が不十分な状況で、特定のグループや個人が既存の枠組みから外れて成功を収める現象を指します。これは通常、地域や組織内で問題がある場合に、その問題を解決するための新しいアプローチやアイデアを発見する手段として利用されます。」ときました。
ポジティブデビアンスの対極として文中で挙げられているのは、「ベストプラクティス」と呼ばれる、上から、外部からの「良いアイデア」。
それは正解であり、王道であり、時には正義でもあります。
その正しさによって有形の抵抗を力業で突破しますが、
文化的、政治的、宗教的な無形の抵抗にあいます。
そして、成立し続けるには外からの資源に頼るので持続可能性がない。つまり定着しない。
ポジティブデビアンスPDはベストプラクティスが使えない、無効化されてきた課題に対して、著者たちがどのように解決を見出したか、その記録であり、その手法をつなげていくためのヒントが記されている。
この書で例示されるPDの実践例、成功例は、
貧困世帯の子どもの栄養不良、児童の学校中退、病院の院内感染症など、
どれも「どうにかしたいけれど、どうしたら良いってのさ!」と言いたくなるような、困難な課題。
それらにPDの手法でアプローチし、改善をもたらしてきた。
「そんなのごく例外じゃないか!」
その通り。でも変化は例外から生まれる。
ソリューションフォーカストアプローチSFA:解決志向精神療法という心理療法の技法があります。
問題に注目するのではなく、すでに生じている例外(解決)に注目し、例外とその方の持つ資源(リソース)を活用することで課題解決に取り組むのがその本懐です。
SFAは既にある変化、内在している力を使うことで、変化への抵抗を無効化します。
このPDは組織に対するSFAの実践方法を説いたような本だと感じました。
もちろん、この著者たちはSFAを学んだ者ではないし、おそらくSFAの存在すらも知らないでしょう。
しかし、困難な状況から解決を生むため、そういった極限の状況から、
すでに起きている例外探しといった共通のアプローチに至っています。
精神分析療法、応用行動分析、認知行動療法、解決志向精神療法、などなど、様々な精神療法がありますが、
それぞれのマスターセラピストたちが一堂に会し、事例の解決のために対話すると、
それぞれが自分の見地に立って発言しあっているにもかかわらず、
対立することなく、和やかにお互いに支持的に対話が進むといいます。
つまり、流派が違ったとしても、変化を生むための真理は同じ境地なのでしょう。
個人や家族といった手の届く対象に対するSFAと地域や部族といった大きな集団に対するPD。
その両方を知り、定型化できるほどではなくとも、いつかこれを生かして変化を生み出せるようになりたい、と刺激を受けた本でした。