まず時間を稼げるようにする
メンタルヘルス対応、「問題社員」対応に限らず、
困った事態への解決志向アプローチの原則は、
うまくいっていない時はなんでもいいから別のことをやってみること
ビシッと良い手が見つからなかったとしても、
あれこれと次の手を探して試行錯誤している間に、
ゆるゆると落ち着きどころが定まっていく、
そんな「時薬」が有効な課題も珍しくはありません。
その時を待てるようにするのが専門家の仕事です。
そのためには、まずだれを支えたらよいのか?
それが重要なポイントです。
「問題社員」の対応で大切なのは、本人の対応ではない。まず上司
誤解を恐れずに言い切ってしまえば、
「問題社員」の対応で大切なのは、
実は本人への対応ではありません。
その周辺のスタッフ、特に直接業務を指示する上司、
その上司を支えることがまず大切です。
まずは、
上司がこれまでいかに「問題社員」の対応に苦労してきたか、
改善のためにどんな努力をしてきたのか、
その足跡を聞き、苦労をねぎらい、共感することです。
それによって、「問題社員」とされているのはどのような事であり、
今までどのような対応がなされてきたのか、
前回に挙げたようなポイントが抑えられてくるはずです。
まずは上司と仲間になること、
「この産業医ならなんとかしてくれるかもしれない」と期待してもらうこと、
それが事態改善の第一歩として必須のことです。
ただし、
「何とかしてくれる」はちょっとだけ修正が必要です。
産業医は触媒でしかないので、
「産業医 が なんとかしてくれる」のではなく、
「産業医 と一緒 ならなんとかできる」と思っていただきたい。
それは当たり前ではあるけれど大切なこと。
ともあれ、
まず上司に味方になってもらわないことにはすべてが始まりません。
予防労務としての「問題社員」対策
そして、なんとしても避けなくてはならないことは、
「問題社員」に関連する負担が、他の社員にも広がってしまい、
ドミノ倒しのように体調不良者が出てしまったり、
頑張って働くより休んだ方が得をするようなモラルハザードがおきて、
職場が無法地帯のようになってしまうこと。
ダメージを他の社員に拡大させないこと、
他の社員の働く力を削がないこと、
そこに注力しなくてはなりません。
なかでも、特に大切なのは上司です。
何故なら、上司はほぼ間違いなく仕事ができる人であり、
その職場を支える柱、周囲の他の社員を支える存在だからです。
上司や他の社員の働きやすさを守ること、
それはすなわち予防労務です。
予防法務としての「問題社員」対策
そして忘れられがちだけれどこれまた大切なことは、
その会社の社長や幹部がしびれを切らせて「クビだ!」などと言ってしまうような事態、そういった破滅的な状況を作らないこと。
衝動的な解雇宣言はほぼ間違いなく準備不足だろうし、
それは不当解雇として訴訟になったらほぼ間違いなく負けてしまう。
普通の経営者であれば不当解雇を争う訴訟のリスクについては理解しているはず、
そして顧問の社労士や弁護士からは、「クビだ!とは言ってはいけません」と制止されていることでしょう。
ではあるのだけれど、だけれども。
追い込まれたときに、人は落とし穴に嵌ってしまうもの。
そのような短絡的、衝動的な事態に経営幹部を陥らせてしまうとしたら、
それは専門家の失敗。
そんな訴訟などの法的問題の芽を摘むこと、
すなわち予防法務ということになりましょう。
とにかく「負けないこと♫」
産業医の専門は「予防医学」だという方があるようですが、
「問題社員」の対応で譲れない点は予防法務であり、次に予防労務です。
そのために何が必要なのかと言えば、
”追い込まれさせないこと”
これが支援者である専門家の役割だと考えます。
じゃあ、何をするのか、ですが、
考えておくのは常に Worst Case Scenarioを想定し、
そうならないように予防しながら打ち手を考えていく、
徒然草に曰く、「負けじと打つべし」ですね
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徒然草 第110段
双六の上手といひし人に、その手立を問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手か疾く負けぬべきと案じて、その手を使はずして、一目なりともおそく負くべき手につくべし」と言ふ。
道を知れる教、身を治め、国を保たん道も、またしかなり。
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具体的なところはまた次回以降に。