主治医への情報提供と確認
「病状が悪かったので、『問題』になっていた」
というフレームで本人と同意できたなら、
休職に至った病状と「問題」の改善について整理するために、
病状について復職可能であると判断した主治医に対して、
・本人の業務内容
・これまでの本人の業務上の「問題」(業務能力不足、業務上の行動の問題)
について情報提供します。
さらに、これまでの本人の「問題」について、
今回休職に至った病状によるものであった、として本人と合意したこと、
病状が回復したことによって、その「問題」が改善されるであろうことについても合意したことを情報提供し、
医学的観点からみて問題ないか、意見いただけるよう依頼します。
Yesでも、Noでも
「問題」が病状によるものだった、ということに、
主治医の返事がYesでも、Noであっても、対応に大きな違いはありません
Yesのとき、すなわち
「『問題』=病状で問題ない」という肯定であれば、
本人と「問題」改善の計画を立ててそれを実行していくことになります。
では、Noのときはどうでしょう?
万が一、主治医が
「『問題』は病状ではない」、
「病状は病状、『問題』はまた別の本人の課題」
という判断を返してきたとしても、まったく問題はありません。
「問題」は病状とは別物ということであれば、
どちらも繰り返さないように改善していけば良いだけのことです。
病状は改善していますし、本人とは問題も再発しないよう、改善させる合意ができています。
さあこれで、休職に至った病状と「問題」の改善について整理ができました。
復職と「問題」改善のステップ
「病状が悪かったので、『問題』になっていた」
というフレームで本人と同意できたなら、
あとはその「問題」であるところの、
成果の不足や業務上の問題行動がなくなるように、
「復職プラン」として上司さんに改善計画を作ってもらい、実行してもらいます。
「リハビリ勤務」「試し出社」など会社によって呼び方は色々です。
診療場面で主治医は「復職しても病状再燃はしない」と判断したけれど、
実際の就業場面ではどうか、
それを確認していく期間ですね。
本人に与えていく仕事の内容としては、経験者としてではなく、
まるで新人さんが能力を付けていく過程のように計画を立てることになるでしょう。
山本五十六提督の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」の言葉の通り、
「そんなこと言われてない、教わったことがない」という言い訳をさせないように、
スタート時点ではマイクロマネジメントと言われるような、
ごく小さなところから指示していくことでしょう。
日報による報告と指導の繰り返しなどを用いて、
日々、「問題」について上司からフィードバックを積み上げていきます。
(これについてはいつかまた別に書きたいと思います)
先の見通し
そして大切なことは、
本来の期待される業務に至るまでの見通しを与えること。
本来の期待される業務に追いつくためのステップアップのタイミング、
最終的な到達の時期を意識させていくことです。
はじめの1か月はこの内容で、この業務量で。
次の2か月目はこれを増やしていって。
と改善と成長のためのステップとハードルをできるかぎり明確に示します。
もちろん順調に予定通りいくとは限りませんが、
全体像がない事には先の見通しが持てないし、
予定がなければ予定通りなのか遅れているのかも分かりません。
再悪化の心配とハレモノあつかい
「問題」を改善させよう、
そんなプレッシャーをかけて大丈夫なのか。
病状を悪化させることにならないのか。
そんな懸念を持つ人もいるかもしれません。
でも、
本来期待される役割がこなせるように成長していくこと、
問題行動を繰り返さないことは、
社員に対して当然期待されることです。
過剰なプレッシャーはかけませんが、
業務により負荷がかかるのは、労働の本質です。
再発を懸念するあまりに本来の負荷もかけないようにしてしまうこと、
これはハレモノあつかいです。
これはパワハラの一類型にもなってしまいます。
そして周囲のスタッフにその分のしわ寄せが及び、不平不満がうっ積する。
職場崩壊、モラルハザードへの入り口です。
復職するからには、時限措置としての配慮はする。
けれどハレモノあつかいはしない。
これは絶対です。
残念ながら再発してしまったら
配慮して段階的な措置としても、
本来の業務を行うことによる負荷に堪えられず、
また勤怠の乱れが出るなど、
再びメンタルヘルスが不調になってしまうというのであれば、
それは病状が回復していないことになります。
診療場面で主治医は「復職しても病状再燃はしない」と判断したけれど、
実際の就業場面で試したところ、残念ながらそうではなかった。
ということです。
それを確認するための「リハビリ勤務」期間ですから、
本人が不調を訴えるようになったり、
勤怠が大きく乱れてくるようであれば、
病状再燃としてリハビリ勤務を中止し、
休職を再開してまたしっかりと回復していただくことになるでしょう。
順調にいったときの話はまた次回に