生成AIの話題になると、最近はどこを見ても
「AIを使わない企業は時代遅れ」「これからはAIを使いこなせないと生き残れない」
といった強いメッセージが飛び交っています。
しかし、地方都市で産業医として働く立場から見ると、
そうした論調は少し“都会の論理”だと感じることが多いですね。
現場から見える「AI導入のリアル」
製造業、サービス業、医療福祉など、地方にはいまだ「AI化が難しい現場」がたくさんあります。
そこでは依然として、
- 人間の判断
- 顧客や患者との対話
- 現場での臨機応変な対応
が中心です。
都市部のオフィスワーク中心の世界から見えるAI活用と、
現場労働を基盤にした地域企業の実情とは、かなりのギャップがあると言えるでしょう。
企業間に広がる「AI導入格差」
大都市の企業ではすでに、
- 企画書作成
- 顧客対応
- 事務処理の自動化
などに生成AIを積極的に導入しています。
一方で、地方の中小企業では、
- 導入コスト
- データ管理の不安
- 人材不足
といった理由から、様子見の姿勢が目立ちます。
この「AI導入格差」は、単なる技術の話ではなく、
働く人の心理的な格差にもつながります。
AIをうまく使いこなせる人と、そうでない人の間に生まれる焦燥感や劣等感。
この構図は、職場のメンタルヘルスに確実に影響を与え始めています。
「生成AI精神病」という新しい現象
生成AIは便利なツールですが、長時間の利用によって「現実感が薄れる」ケースも報告されています。
たとえば、
- 自分の考えをAIに確認しないと落ち着かない
- AIとの対話が現実の人間関係よりも心地よく感じる
といった状態です。
まだ症例報告レベルではありますが、こうした傾向は臨床の現場でも見られつつあります。
孤独感を抱えやすい人、完璧主義の人ほど、AIとの擬似的な関係にのめり込みやすい点には注意が必要ですね。
SNSの声と現場の温度差
SNSでは「AIを使わないと取り残される!」という声が大きく響きます。
しかし、現場で働く人たちはそこまで単純ではありません。
「AIで仕事が楽になった」と喜ぶ人もいれば、
「仕事の意味が薄れていく」と戸惑う人もいる。
実際、面談の中では次のような声をよく耳にします。
- 「AIに置き換えられそうで不安」
- 「AIに頼ると、自分の成果じゃない気がする」
- 「仕事のモチベーションが下がった」
こうしたAI時代特有の心理的ストレスを、個人の問題として片づけず、
職場全体で共有し、対話的に解消することが大切です。
企業が目指すべき「AIとの共生」
AIを拒絶することも、盲信することも現実的ではありません。
重要なのは、「AI=人間の代わり」ではなく、「AI=人間を支える補助ツール」として位置づけることです。
そのために企業ができることは、
- 従業員へのAIリテラシー教育
- メンタルケアの仕組みづくり
- 導入段階から産業医が関与する体制
などでしょう。
AIを導入することが目的ではなく、
人間の創造性を支える方向に使えるかが問われているのです。
まとめ:人間らしさをどう守るか
生成AIは、間違いなくこれからの企業活動を左右する存在です。
しかし、その「使い方次第」で、働く人の心身の健康に大きな差が生まれます。
ネット上の「AIを使わない企業は終わりだ」という極端な声に流されず、
自社の業務特性と、従業員の心理的安全性を踏まえて導入を考えるべきです。
産業医としては、AIの進化を止めるのではなく、
その裏にある「人の不安」や「現実との乖離」に目を向け、
企業が人間らしさを保ったままテクノロジーと共生できる環境を整えていくことが使命だと言えるでしょう。
