結論:原則として、産業医は全ての事業所に対して対応が求められます
複数の事業所がある場合でも、産業医はそれぞれの事業所について労働者の健康管理を行う責任があります。特に労働者数が50人以上の事業所は、労働安全衛生法により産業医の選任が義務付けられており、巡視(訪問)も必要です。
産業医が関与すべき範囲と訪問義務の根拠
労働安全衛生法第13条に基づき、事業場ごとに労働者が50人以上いる場合は産業医の選任が義務付けられています。
また、同法施行規則第15条では、産業医による「毎月1回以上の作業場巡視」が定められており、これは原則として各事業場単位で行う必要があります。
ただし、同一法人内で複数の小規模事業所(例:50人未満)がある場合、一定の条件を満たせば統括管理も可能ですが、その際も労働者の実態に応じた関与が必要です。
よくある誤解:本社にだけ訪問すればよい?
「産業医が本社を巡視すれば、他の事業所は対象外になる」と考えるのは誤りです。
たとえ本社で労働衛生体制を統括していても、産業医は労働者が実際に働く環境に目を配る必要があり、各事業所ごとに巡視を行うことが原則です。
実務での注意点:日程調整や巡視記録の一元管理
複数事業所をカバーする場合、産業医と事業者側で以下の点に注意が必要です:
- 巡視スケジュールの事前調整(例:月ごとに訪問先をローテーション)
- 巡視記録・指導内容の事業所ごとの記録管理
- オンラインによる衛生委員会参加の可否と位置づけ
また、長距離移動が必要な場合は、産業医の負担も大きくなるため、地域産業医との連携や、巡視の効率化も検討すべきです。
産業医としての支援の在り方
産業医は単に訪問するだけでなく、事業所ごとの労働環境や業種特性を把握し、以下のような支援を行います:
- ストレスチェック結果の事業所別分析と助言
- 作業環境改善に向けた現地確認とフィードバック
- 衛生委員会でのリスク共有と対策提案
訪問が難しい場合でも、Web会議ツールを活用した面談や情報共有など、柔軟な支援体制を整えることが可能です。
まとめ
複数の事業所を持つ企業では、それぞれの事業所の衛生状態やリスクに応じて、産業医が適切に関与することが求められます。
本社だけでなく、実際に労働者が働く場所に目を向けることが健康管理の本質です。訪問頻度や支援の方法については、産業医と事業者が連携し、現実的かつ法令に沿った形で体制を構築することが重要です。
