自分的には残念!な話の続きです。
つらつらと、いまお困りの事例についてお話を伺ってみました。
まとめてみると次のようです。
事例1
本社スタッフ。「うつ」で休職中。数年前から休職を繰り返している。繁忙期になると調子を崩してしまう。これまでは数週間の休職を繰り返し、今回は約3か月の長期休職となっている。
期間としてはもうじき復職となる目安だが、十分に回復できているかどうか、人事スタッフとしては不安に思っている。
本件への対応を見直したい、という思いが今回の産業医依頼となったことのメインのきっかけ。
事例2
本社スタッフ。在職数年。不注意などにより、失敗が多い。経験年数に見合った十分な仕事ができていない。にもかかわらず本人に不出来の自覚がない様子で、成果の改善もない。
人事スタッフはADHDなどの発達特性による課題なのではないかと疑っている。
どうやら上司や周囲が困り、本人は困っていない状況。
人事「診断を付けてもらってー」
私の(ほとんど言えないけど)思った事
はい。メンタル対応で企業が困っちゃうパターンど真ん中ですねー
カテゴリー: お知らせ
産業医の依頼が来ましたよ。からの<あのブドウはスッパイ>の話。その1
今回は産業医としての失敗談を。
困った事態のお役には立てたと思うのだけれど、自分的には残念!になってしまった話です。
過日、とある産業医紹介会社から産業医の依頼をいただきまして。
それほど近隣でもない事業所ではあるけれど、メンタルヘルスの課題でお困りらしい。
「メンタルヘルスの対応が得意な産業医、指導力を発揮できる産業医」をご希望。
今回の訪問を依頼いただいた事業所は生産工場で、本社は首都圏、約150km離れた遠方にあるという企業体でした。
「最初の1回だけは短時間になるが本社に来てほしい、その後は生産工場に定期的に訪問してほしい」とのこと。
HPも拝見し、なかなかしっかりとした企業でいらっしゃる印象でした。
紹介会社の方と
<これは私向けの事案ですねい。ご理解いただきありがとうございます>
<最初の1回は本社にというのは、本社の重鎮にご挨拶でしょうかね>
<訪問事業所は私の活動圏ぎりぎりのところですね>
などと相談しながらエントリーさせていただき、採用のためのWeb面接の設定をお願いします。
割とお急ぎの話のようでしたが、なかなかWeb面接の日程が決まらず。数回のやり取りののち、何とか日程設定できました。
必要不可欠な精神科領域の薬の欠品で思うこと
しばらく前から、新型コロナ騒動やら、ウクライナ戦争やら、後発品製造業者の問題やらの影響で、古くて有用な薬が供給不安定になっている。
思いつくままにあげると
抗精神病薬 クロルプロマジン(商品名コントミン、ウィンタミン)
抗うつ薬 アモキサピン(アモキサン)、マプロチリン(ルジオミール)、ノルトリプチリン(ノリトレン)
抗てんかん薬 バルプロ酸(デパケン)
抗パーキンソン病薬 ビペリデン(アキネトン、タスモリン)、トリヘキシフェニジル(アーテン)
抗ヒスタミン薬 プロメタジン(ピレチア、ヒベルナ)
などなど
「供給不安定」ならなんとか使えるかのように聞こえるが、実情は薬局に入荷せず「売り切れ」なので、処方できない。
処方箋を書くことはできなくないが、肝心の薬局に物がないのでダメ。
なかには代謝物に発がん性が見つかり、もう二度と使えないであろう薬もある。
もはや諦めるしかない。
これまでの処方が継続困難になってしまい、処方を変更しなくてはならないことで、
これまで状態が安定していた患者さんが、病状が悪化してしまったり、副作用が出てしまったりする。
目に見えにくいところでは、これまでならうまく治療できていたであろう人が、そのあてにしていた薬がないことで治療がうまくいかないことも時々ある。
「生き方としての苦しみ」「人生の課題」と、「生き物としての病気」「狭い意味での精神の病気」をごっちゃにしない
ある人が精神科を受診するのは、精神症状があるからです。まあたいてい。
不眠や頭痛、抑うつ気分、躁状態、パニック発作など様々な精神症状があります。
でも、精神症状があるからと言って、「生き物としての病気」「狭い意味での精神の病気」であるとは限りません。
「生き方としての苦しみ」「人生の課題」から来る精神症状である場合もあります。しばしば。
「生き物としての病気」「狭い意味での精神の病気」というのは、
はっきりとした原因は不明ですが、その存在を否定しようとしても、歴史的に存在が証明されている古来からの「病気」です。
代表的な診断は統合失調症やうつ病、躁うつ病。
生物学的、脳機能的な病気であり、心理的要因で起きるものではありません。
治療としては、薬物療法や電気治療といった、物理的、科学的な治療が有効となるものです。
「生き物としての病気」なので、極論すれば本人の改善の努力に関係なく、薬が効けば良くなります。
一方で、「生き物としての病気」ではなく、「生き方としての苦しみ」が精神症状として表れてくる場合があります。
本人の生まれや育ち、理不尽な出来事、人生の逆境など、「そこから逃れたい、今の状況では嫌だ」という心理的な要因が、苦痛の表現として精神症状として表れます。
「生き方としての苦しみ」であり「人生の課題」です。
診断名としては摂食障害やパーソナリティ障害、嗜癖行動、適応障害などがこれに当たります。
治療としては、薬物療法は補助的な役割に留まります。
人薬や時薬、本人や環境の変化が改善のためには必要です。
改善のための本人の努力はほぼ必要。
自分は何もしないで良くなった、という人は少ないでしょう。
使わない言葉「安定剤」その2 またはなんでBZD系薬剤は処方されるのか
その1では、「(精神)安定剤」として出されているBZD系薬剤はむしろ精神を不安定にする、と書きました。
「じゃあなんで、不眠症にBZD系睡眠薬を出すのか?」って思いますよね。
<たとえ時間が短くても、睡眠としては浅くても、睡眠がとれないよりはまし>という状況のためにあるのだと思います。
BZD系薬剤も、発売された1960年代当初は「安全な睡眠薬」として登場したのです。
比較対象は、それまでに処方されていた、バルビツール酸系睡眠薬などのかなり危険な薬剤でした。これらは過量服薬すると呼吸停止する作用もあり、自殺手段として用いられました。
「(比較的)安全な薬」としてBZD系薬剤は普及したのです。
そこから40年以上、BZD系薬剤に代わる選択肢がなかった、ということもありましょう。