おおた産業メンタルラボ

コラム・お知らせ

困った新入社員にどう対応する?違和感を早期に見極める方法【前編】問題社員は採用時から決まっているのか

職場とのすれ違いが生まれる理由


問題のある行動によって職場が疲弊することは、現実にある。
しかし、その問題を「採用してはいけない人物を見抜けなかった」とだけ考えると、重要な点を見落とす。

採用面接では感じがよく、経歴にも大きな問題がなかった。
それにもかかわらず、入社後しばらくすると、
上司の指示に反発する、
同僚とのトラブルを繰り返す、
周囲への配慮を欠いた発言をするなど、
職場を困らせる行動が目立ち始めることがある。

こうした状況では、経営者や人事担当者から、次のような声が上がる。

「なぜ、こんな人を採用してしまったのか」
「面接の段階で見抜けなかったのか」
「前の職場でも問題を起こしていたのではないか」

その気持ちは理解できる。
実際、一人の従業員の問題行動によって、管理職や人事担当者が対応に追われ、周囲の従業員が疲弊し、職場全体の雰囲気が悪化することもある。
場合によっては、休職や退職、ハラスメント相談、労務紛争などへに発展してしまう。

「問題社員に入社されると困る」という認識そのものは、決して間違いではない。

しかし、そこで問題を「採用時に見抜けなかったこと」だけに帰着させると、企業が本当に見直すべきものが見えなくなることがある。

なお、本稿では、本人の人格や人間性を否定する意味ではなく、職場において業務上・対人上の問題が繰り返され、組織運営に継続的な支障が生じている状態にある従業員を、便宜上「問題社員」と表現する。

採用時に人のすべてを見抜くことはできない


問題社員への対策として、採用前のバックグラウンドチェックやリファレンスチェックが注目されることがある。

過去の職歴や在籍状況、経歴の正確性などを確認することは、職種や立場によっては有用である。
特に、経営に大きな影響を与える立場や、高い信用が求められる職種では、一定の確認が必要になる場合もある。

しかし、
すべての従業員について詳細な調査を行うことは、費用や時間の面から現実的ではない。
個人情報やプライバシーへの配慮も必要である。
何より、過去を調べれば、将来その職場で問題を起こすかどうかが確実に分かるわけではない。

そして、
前の職場では特に問題なく働いていた人が、新しい職場では適応できないことがある。
反対に、前の職場では能力を発揮できなかった人が、環境や上司が変わることで、大きく活躍することもある。


面接にも限界がある。
候補者は採用されるために、自分の長所や経験をできるだけよく見せようとする。
企業側も、候補者に入社してもらうために、自社の魅力を中心に伝える。
つまり、採用面接は、候補者と企業の双方が互いに「よい面」を見せ合う場になりやすい。

数回の面接だけで、
その人が注意や指導をどのように受け止めるのか、
忙しい場面でどのような行動を取るのか、
苦手な同僚とどう関わるのか、
そこまで正確に判断することは困難である。

採用の精度を高める努力は必要だ。
しかし、採用時に将来の問題を完全に予測できるという前提そのものが、現実的ではない。

「問題社員」は最初から「問題な人」だったとは限らない


職場で問題を起こしている従業員を見ると、周囲はその人を「もともと問題のある人だった」と考えたくなる。

もちろん、本人側に明確な問題がある場合はある。

業務に必要な能力が不足している。
注意を受けても行動を改めない。
他者への配慮を欠いている。
責任を他人に転嫁する。
感情的な反応を繰り返す。

こうした問題まで、すべて職場環境の責任にすることはできない。

一方で、職場の中で問題となる行動は、本人の性格や能力だけで生じているとは限らない。

例えば、
業務上の役割が曖昧で、上司によって指示内容が異なる職場。
評価の基準が分からず、注意や指導も担当者によって変わるとき。
相談しても明確な回答が得られない一方で、問題が起きれば本人だけが責められる環境。

このような職場では、もともと曖昧さへの対応が苦手な人や、不安が強い人は混乱しやすい。

反対に、細かな指示や報告を重視する職場に、強い裁量を求める人が入れば、本人は「細かく管理されている」と感じ、上司は「指示に従わない」と感じるかもしれない。

どちらかが一方的に悪いわけではなくても、すれ違いは起こる。

最初は小さな違和感だったものが、注意と反発の繰り返しによって大きくなることもある。
上司は、「何度言っても分からない」と考えて指導を強める。
本人は、「自分だけが不当に責められている」と感じて防衛的になる。
その態度を見た周囲は、さらに本人への警戒を強める。

本人の行動と職場側の反応が互いを刺激し合い、問題が増幅していく悪循環になってしまう。

問題社員が単純に職場へ「入り込んできた」というよりも、
本人と職場との相互作用の中で、問題が形成されていく場合がある。

「問題」は「誰が悪いか」だけでは整理できない


職場でトラブルが起きると、企業は原因を一つに決めたくなる。

本人の性格に問題がある。
上司の指導方法が悪い。
業務量が多すぎる。
メンタルヘルス上の問題がある。

しかし、実際の職場問題は、それほど単純ではない。

多くの場合、次のような複数の要因が重なっている。

  • 本人の能力や経験
  • 性格や行動の傾向
  • 心身の健康状態
  • 業務の内容や負荷
  • 上司の指導方法
  • 同僚との関係
  • 組織内の役割やルール

疾病が影響している場合もあれば、疾病だけでは説明できない場合もある。能力不足が中心となっている場合もあれば、本人の能力を生かしにくい業務配置になっている場合もある。

だからこそ、問題が起きたときに必要なのは、すぐに「本人が悪い」「職場が悪い」と結論を出すことではない。

何が起きているのか。
どの場面で問題が生じているのか。
本人側に変えられることは何か。
職場側に調整できることは何か。
調整しても難しいことは何か。

これらを分けて考える必要がある。

これは本人の責任を曖昧にすることではない。

むしろ、問題を構造的に整理することで、本人に求めるべき改善も、会社が行うべき対応も明確になる。
それは責任の所在ではなく、対応可能性を整理することだ。

我慢を続けることが、本人への支援になるとは限らない


「問題社員を一方的な悪者にしてはいけない」
この考え方は重要である。

しかし、それは、企業や周囲の従業員がどこまでも我慢し続けるべきだという意味ではない。

職場や業務との相性が悪い従業員は、実際に存在する。

本人が努力しても、求められる業務水準に到達することが難しい。
職場側が一定の配慮や調整を行っても、対人関係の問題が繰り返される。
本人が望む働き方と、会社が提供できる働き方が大きく異なる。

そのような状態で雇用関係だけを長期間維持することが、本人にとって幸せとは限らない。

本人は失敗や指導を繰り返し、自信を失っていく。上司は対応に疲れ、同僚は不公平感や不安を募らせる。
問題が深刻になるほど、当事者同士の感情的な対立も強くなる。

「もう少し様子を見よう」という判断が、結果として半年、一年と問題を先送りすることもある。

しかし、判断を先送りすることは、必ずしも慎重な対応ではない。

歩み寄ることができるのであれば、歩み寄る。
業務の進め方や指示方法を調整することで改善できるのであれば、試してみる。

一方で、一定の調整を行っても適応が難しく、本人と職場の双方が疲弊し続けるのであれば、別の業務や別の環境を検討することも必要である。

雇用関係を維持し続けることだけが、本人への配慮ではない。

深刻な対立や健康悪化に至る前に、別の道を選択する方が、本人と企業の双方にとって適切な場合もある。
継続だけを善としない判断をすることも必要になる。

必要なのは、違和感に早く気づくこと


企業が目指すべきなのは、問題を起こす可能性のある人を、採用時に完全に排除することではない。

そんなことは現実には不可能である。

重要なのは、本人と職場との間にある違和感を、できるだけ早い段階で捉えることだ。

採用前に分かるのであれば、それが最も望ましい。
仕事内容や職場の特徴を具体的に伝え、候補者自身にも、その環境で働けそうかを考えてもらうことができる。

ただ、採用前には分からなかったとしても、試用期間や入社後の早い段階で気づくことができれば、双方のダメージは小さくできる。

小さなすれ違いの段階であれば、役割や指示方法を調整することで改善するかもしれない。

それでも難しい場合には、問題が深刻化する前に、配置や雇用のあり方を含めて検討できる。

問題社員対策を、「悪い人を見抜く技術」として考えるだけではまったく不十分である。

本当に必要なのは、職場の現実を分かりやすく伝え、本人と企業の双方が適合性を確認し、違和感があれば早期に扱える仕組みではなかろうか。

次回の後編では、職場とのミスマッチを早期に見極めるために、採用前から試用期間までに企業ができる具体的な取り組みについて考えてみます。