おおた産業メンタルラボ

ブログ・お知らせ

職場のメンタル問題、悪いのは上司か その3 なぜ「つなぐ力」が組織を守るのか 

テレビ朝日ニュース「精神疾患による労災認定 初の1000人超で過去最多に『上司とのトラブル』など『職場の対人関係』が要因」

精神疾患による労災認定 初の1000人超で過去最多に 「上司とのトラブル」が急増 仕事が原因で精神的な疾患を発症し、労災認定された人が2024年度初めて1000人を超え、過去最多となったことが分かりましnews.tv-asahi.co.jp

から考えた、第3回、最終回

上司の役割は「解決」ではない─職場のメンタル問題を動かす“つなぐ力”

結論から言えば、
職場のメンタル問題において上司に求められているのは、

「解決すること」ではなく、「つなぐこと」です。

ここを取り違えると、現場はほぼ確実に機能不全に陥るでしょう。

なぜ「上司が解決する」は破綻するのか

これまで見てきた通り、職場のメンタル問題は単純ではありません。

その中身は、
医学的に対応すべき問題
指導や育成で改善する問題
業務設計や組織で調整すべき問題
これらが混在しています。

つまり、
一人の上司が単独で判断し、解決できる構造ではない
ということです。

にもかかわらず現場では、
「まずは上司がなんとかするべきだ」
という前提で動いてしまう。

この時点で、すでに無理筋でしょうね。

抱え込むほど、問題は悪化する

上司が「なんとかしよう」とするほど、何が起きるか。

  • 問題が個人の責任として処理される
  • 必要な視点(医学・労務)が抜け落ちる
  • 対応が属人的になる

結果として、

  • 対応が遅れる
  • 判断がぶれる
  • 記録が残らない

という、典型的な“事故前夜”の状態になります。

そして最後は、

「なぜ適切に対応できなかったのか」

と、きれいに責任だけが残る。

少し皮肉ですが、構造的には必然ですね。

「つなぐ」という発想に切り替える

ではどうするか。

ここで必要なのが、「つなぐ」という視点です。

具体的にはシンプルです。

  • 迷った時点で人事・産業医に共有する
  • 医学的な可能性があれば早期に専門家へつなぐ
  • 指導継続の是非を一人で判断しない

これだけで、問題の進行はかなり変わります。

ポイントは一つ。

自分で抱えて解決しないことです。

本質は「問題をどこに乗せるか」

重要なのは、

自分で解決することではなく
適切な場所に問題を乗せること

です。

これは臨床でも同じで、適切な科に紹介するだけで患者さんの経過が大きく変わる、というのは珍しくありません。

職場も全く同じ構造です。

ただし「つなぐ」は個人では完結しない

ここで現実的な話をしておきます。

「つなぐ」が機能するには前提条件があります。

  • 相談できる相手がいる
  • 専門的な視点が用意されている
  • 組織として共有が許容されている

つまり、

現場の努力だけでは解決できない領域がある

ということです。

この前提がない企業では、

  • 現場任せ
  • 判断の遅れ
  • 対応のばらつき

が起き、問題は確実にこじれていきます。

問うべきは「誰が悪いか」ではない

ここまでを踏まえると、問いそのものが変わります。

問うべきは、

「上司がどう対応するか」ではなく、

「この問題をどの構造で扱うのか」

です。

  • 個人の問題として処理するのか
  • 構造として切り分けるのか

この選択で、その後の展開はほぼ決まると言っていいでしょう。

勝負は“問題になる前”に決まっている

そしてもう一つ、見落とされがちな点があります。

重要な判断は、

問題が顕在化する“かなり前”に行われている

ということです。

例えば、

  • ちょっとした違和感をどう捉えたか
  • 誰と共有したか
  • どんな視点で見ていたか

この積み重ねが、後の結果を分けます。

大きなトラブルは、ある日突然降ってくるわけではありません。

静かに始まり、静かに進行しています。

前提を変えれば、行動が変わる

だからこそ必要なのは、

「正しい対応マニュアル」ではありません。

問題の捉え方という“前提”を変えることです。

前提が変われば、

  • 同じ場面でも
  • 選ぶ行動が変わる

そしてその差が、

  • 問題がこじれるか
  • 整理されて収束するか

を分けていきます。

まとめ

  • 上司の役割は「解決」ではなく「つなぐ」
  • 抱え込むほど問題は個人化し、悪化する
  • 重要なのは“どこに問題を乗せるか”
  • 「つなぐ」は組織的前提があって初めて機能する
  • 問うべきは「誰が悪いか」ではなく「どう扱うか」
  • 勝負は初期の違和感の扱い方で決まる

このテーマについて、3回にわたって整理してきました。

あとはシンプルです。

それぞれの現場で、

  • 個人責任で処理するのか
  • 構造として扱うのか

どちらの前提を採用するか。

その選択が、結果を分けるでしょうね。