おおた産業メンタルラボ

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ポリヴェーガル理論について その2 働く人のメンタルヘルスにどうつながるか

前回はポリヴェーガル理論という、
生物の進化に沿った自律神経系の発達の理論について書きました。

そして、ポリヴェーガル理論によれば、
人間はポリヴェーガルな自律神経系の働きにより、
人間社会で意見の食い違いや、ちょっとした問題が起きたときには、
まず、
腹側迷走神経系を使って「私は敵ではないですよ」という友好の合図を出し、
「話し合い、交渉」することで事態を解決しようとし、
次に、
それがうまくいかず、危機に陥ったときには、交感神経系が優位となり、「戦うか逃げるか」の反応で事態を打開しようとします。
そして、それもうまくいかなった時には、背側迷走神経系が優位になり、
「声が出ない、体が動かない、頭の中が真っ白になる」といった「凍りつき」が起こる、
というところまで説明しました。
 
でも、凍りつくことがすぐには、有利な結果には結びつかないような気がしますね。
 
 

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ポリヴェーガル理論について その1 自律神経系についての仮説

自律神経系についての話が続きました。
自律神経系といえば、いまアツいのは「ポリヴェーガル理論」ということで、
今回は「ポリヴェーガル理論」について書いてみます。
 
まずはじめに、ポリヴェーガル理論は、一つの仮説です。
まだ証明されたり、定説とされている考えではありません。
ただ、私の考えでは、このポリヴェーガル理論により、危機的状況に対する人の反応、
特に性暴力の被害者や、ASD者の「凍りつき」を理解する時に役に立つように思います。
 
 

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OD、あるいはPOTS、起立性調節障害について

前回の「自律神経失調症」に続いて、今回はODについてです。
ODと言っても精神医療ユーザーなどが言うオーバードーズ(Over Doses:過量服薬)ではありません。
起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)です。
POTS:Postural Orthostatic Tachycardia Syndromeという表現もあるようです。
個人的には、POTSの方が病態を表しているし、症候群だし、紛らわしくないし、
で、良い呼び方なのではないかと思ってます。
と言って、紛らわしさを面白がってネタにしたりしてしまいますが。
 

|まずはまともな説明|
―――――
起立性調節障害(Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome, POTS)は、主に立ち上がったり長時間立っている際に、心拍数が異常に上昇し、めまいや倒れることがある症候群です。これは、自律神経が血圧や心拍数をコントロールするのに問題があるため起こります。主な症状としてはめまい、倦怠感、頭痛、集中力の低下などの症状が現れます。
これは自律神経の調節異常に起因しており、血液の適切な循環が保たれないことが特徴的です。
―――――

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精神科医が使わない言葉「自律神経失調症」

精神科用語のようでいて、実は精神科医がほとんど使わない言葉。
今回はそんな「自律神経失調症」について書いてみます。
 
詳しくは下記の「正しい説明」を参照していただいて、
簡単に言うと「自律神経失調症」とは、
「生活習慣の乱れや心理的ストレスの過多によって起きる、身体の自動的な調節能力のバランスが乱れてしまった状態」のことです。
 
まあそういう診断名はあります。
でも、はっきり言って、精神科医はほとんど使いません。
精神科医が出会うのは、患者さんから「紹介元のかかりつけの先生にそういわれたんです」という状況ばかりです。
イメージとしては一般の開業医が「あー、自律神経失調症ですねー」と患者さんにとりあえず丸めて伝えるために使っているのでしょうか。
<そういっておけばなんとなく納得するだろう>みたいな。
 

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精神医学用語のようでいて曖昧な言葉「ノイローゼ」

多くの人が見聞きしたことはあるし、なんとなく使ったこともあるかもしれない言葉、「ノイローゼ」。

産業医面接や精神科の初診場面などでも患者さんまたはご家族から「それが原因でノイローゼになっちゃってー」などとしばしば出てくる言葉です。
でもこれって結構あいまいで、便利な言葉で、でもどんな事を言っているんでしょう?
今回はその「ノイローゼ」について書いてみます。
 

「ノイローゼ」、その元は、と言えばドイツ語“Neurose”なのでしょう。
英語だと“Neuroses”、直訳すれば「神経症」になりましょう。

「神経症」自体が最近の操作的診断基準だと消されてしまった言葉で、またこちらは別に解読してみるのが必要ですが、今回は「ノイローゼ」。
日本語になった「ノイローゼ」は必ずしも「=神経症」として使われているわけでもなさそうです。

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